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事実上、盗賊頭

2013.07.02 (Tue)
 ジェフがエレナの家にたどり着いたのは、夜中近くだった。
 酷い雨に降られ、びしょ濡れのまま家に入った。
 「濡れねずみね」
 起きていたエレナがぷっと笑った。
 「やられた・・・」
 ジェフは外套を脱ぎながら頭を振った。
 「ねえ」
 エレナが布を渡しながら言った。
 「どうして急にトリストティリスなんて行って来たの?」
 「・・・探し物だ」
 ジェフは、今はその話題に触れたくなかった。
 「それより、お前があの辺で顔が通ってるって話を聞かせてくれ」
 「ああ・・・」
 エレナは、ちょっと苦笑してから話し始めた。

 昨年か一昨年のことだった。
 いつも買い物に行く村が、盗賊に襲われた。
 「ああ・・・エレナ・・・」
 疲れきった様子の店の女主人が、エレナを見て弱々しく微笑んだ。
 「女将さん、どうしたんです!?」
 「盗賊が来たのよ・・・。みんな持っていかれてしまったわ・・・」
 その後を、王族の荷物が平然と運ばれて行った。
 エレナは心中に怒りを覚えた。
 村がこんなことになってるのに・・・!
 エレナは単身、盗賊の本拠地へ乗り込んだ。
 幼い頃、サルトゥスを襲った盗賊への恨みも甦ってきた。
 雨の夜だった。
 見張り役を眠らせ、バタンッと扉を蹴破った。
 「誰だ!?」
 「盗賊よ」
 フードを目深に被ったエレナは言った。
 盗賊たちは顔を見合わせ、笑い声を上げた。
 「なんだい姉ちゃん。うちに入ろうってのか!?」
 「見張り役はどうした?」
 「眠ってもらったわ」
 「眠って?」
 「殺さなかっただけ感謝しなさい」
 エレナはフードを脱ぎ捨てた。
 かがり火に明々と照らされる赤黒い髪に、ゾッとするほど真っ青な瞳。
 「何だと!?」
 「うちの連中をやっちまったてのか!?」
 「だから、殺してはいないわ。今日、ルーメンの村から盗んだものを返しなさい」
 「何だと!?」
 「馬鹿言ってんじゃねえ!」
 「面倒くせえ、殺っちまえ!!」
 大男たちが一斉にエレナに襲い掛かってきた。
 しかし、エレナのほうが強かった。
 手下たちを使い物にならなくすると、カシラに詰め寄り、地面に這い蹲らせた。
 エレナは細身の剣を頭の喉元に突きつけて言った。
 「今後、平民の家を襲うことは一切禁止するわ」
 「なっ、何言ってやがる・・・!」
 「どこかの村を襲えばすぐに私の耳に入るわ。そのときは」
 エレナはぐっと剣に力を込めた。
 「あんたと、あんたの家族を殺しに行くわ」
 威厳に満ちた、高貴なものが生まれ持つ、その場を支配する圧倒的な力。
 盗賊頭はエレナを畏怖し、すぐに言った。
 「わ、わかった。もう村は襲わねえ」
 「誓いなさい」
 「誓う」
 エレナはカシラを解放してやった。
 その光景を見ていた手下の者たちも、エレナから後ずさった。
 「あんたはカシラの器がある」
 盗賊頭が言った。
 「うちのカシラにならねえか?」
 「私が?馬鹿言わないで」
 エレナは笑い転げた。
 そのまだ幼さの残る仕草に、盗賊たちは心底不思議なものを覚えた。

 「だから、あの辺りの盗賊は私に手出ししないわ」
 現在。
 「でも、だからって気をつけろよ」
 「大丈夫よ。負けたりしない」
 あんたって意外と心配性ね、とエレナは言った。
 「あなたはどうしてトリストティリスで育ったの?」

 ジェフは、紋章官一族が国を追われることになった理由、その後の運命を、詳しく語って聞かせ、その夜は珍しく二人で遅くまで話しこんだ。
 今、彼は、できるだけ気を逸らしていたかった。
 今日トリストティリスで見つけてしまった、“探し物”から。

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