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赤の紋章 1

2013.08.10 (Sat)
 ジェフと王族の衛兵たちは、玉座の間の扉を蹴破った。
 そこには、血まみれになって倒れた国王の姿と、それを見て高笑いしているコルニクスの姿があった。
 「これは王女」
 コルニクスはエレナを見て仰々しく深々と礼をした。
 「あなた様のお父上は亡くなられましたよ」
 「嘘・・・」
 ということは、次の後継者は自分になる。
 「あなたには王位を継ぐ気がおありですかな?」
 エレナは何も言うことができなかった。
 そんなもの、継ぎたくない。
 しかし、暴動を止めるには、民が死にゆくのを止めるには、自分が王位を継ぎ、民を殺すことは赦さないと宣言しなければならない。
 「あるわ」
 「それは困りましたな。クレスト、王女を殺せ!!」
 コルニクスは、たった今玉座の間に飛び込んできたクレストに命令した。
 「それはできません」
 クレストは初めてコルニクスの命を拒否した。
 「何を――!?」
 「王女が正統な王位継承者です。他の者は何人も、王位を継ぐことはできません」
 「この紋章が」
 コルニクスは息絶えたウィリデウスの首から、金の鎖に繋がれた紋章を引き抜いた。
 「この紋章をかけたる者にこそ与えられる恩寵がある!!私はそれを頂戴する!!」
 「よせ!!やめろ!!」
 ジェフが叫んだ。
 コルニクスは血まみれの首飾りを首に下げ、両手を挙げて狂気に満ちた笑い声を上げた。
 「これで私がこの麗しきベルスの王だ!!跪け!!私の前に跪け!!」
 しかし――。
 「っ!?」
 コルニクスは突然、四つん這いになって崩折れた。
 鎖が、めりめりとコルニクスの首に食い込んでいく。
 「かっ・・・カハッ・・・!!!」
 まるでその首の先に重石をつけているように、鎖はどんどん食い込んでいく。
 「エレナ、見るな!!」
 ジェフがエレナを抱き寄せた。
 凄まじい悲鳴が響いた。
 鎖はコルニクスの首を食い破り、その首を叩き落した。
 おびただしい血があたりに広がった。
 「そんな・・・」
 「嘘だ・・・」
 王族たちはどよめいた。
 「・・・正統な王位を継ぐもの以外があの鎖飾りを首にかけると、あの紋章にかけられた命の重みそのものが襲い掛かる。王家に与えられた恩寵と共にかけられた呪いだ」
 ジェフが呟くように言った。
 そのとき、突き上げるような地揺れがあった。
 ついに、国が滅亡するときがやって来たのだ。
 がらがらと玉座の間が崩れ落ちる。
 「逃げろ!!」
 王族の衛兵たちは、慌てて外へ逃げ出した。
 しかし、ジェフとクレストは、逃げようとしなかった。
 「王女を放してください、ジェフ」
 「嫌だといったら?」
 「あなたを殺すまでです」
 「やめて!!」
 エレナが二人の間に割って入った。
 その間も、ぐらぐらと地面が揺れ続ける。
 「どけ!!」
 エレナを押しのけて、ジェフがクレストに近付いていった。
 「やめて!!」
 「やっとか」
 「何がです?」
 クレストは怪訝な顔をして剣を抜いた。
 そして、ジェフが何か言う前に、二人の斬り合いが始まってしまった。
 「クレスト、やめろ!!」
 「私には王家をお守りし、この国を統治していただく義務がある!!」
 「わかってる!!だがお前とは争いたくないんだ!!」
 ジェフがクレストの剣を弾き飛ばし、クレストは足場を取られ、壁に頭をぶつけて気を失った。
 「・・・・・・」
 ジェフは血にまみれた首飾りを取り上げた。
 「お前には一旦王位を継いでもらう」
 「・・・嫌よ」
 もし自分が本物の王女じゃなかったら?
 あの執政官のように凄惨な最期を遂げるのだろうか。
 エレナは恐ろしかった。
 「『お前は正統な王位継承者だ。この国の王位を継ぎ、戦いを止めるんだ』」
 エレナの不安を読み取ったのか、ジェフが微笑んだ。
 そして、ゆっくりと、首飾りをエレナの首にかけた。
 あの大きな紅玉の紋章は、エレナの首に掛かると、まったくその重さを感じさせなかった。
 血に濡れていた紋章は再び赤い輝きを取り戻した。
 「『これを以って、汝をこの地の王となさん』」
 ジェフはそう言うと、一歩退き、エレナに跪いた。

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