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第三話

2015.02.20 (Fri)
 「・・・どういう意味?」
 ユリアはギルの腕の中で怪訝な声を出した。
 「俺の目の前で、二度も死なないでくれ!!」
 「・・・え?」
 「わからないか?」
 そう言ってようやくユリアを放したギルの頬を、涙が伝っていた。
 「・・・お前、死んでるんだよ」

 ――何、それ?

 「な、何言ってるの?」
 「わからないんだな・・・。お前、一月前、俺の目の前で、さっきみたいに子供を助けようとして、一緒に車にはねられて・・・」 
 その言葉に、ユリアの記憶が走馬灯のように蘇ってきた。
 車道に飛び出した子供を助けようと、その後を追った。
 しかし、間に合わなかった・・・。

 「どうして・・・どうして・・・」
 ギルは泣きながら、再びユリアの身体をぎゅっと抱きしめた。
 「こんなに温かいのに、お前はもういないんだ・・・。どうしてこんなことに・・・」
 「母さんが、私を追い出したのは・・・」
 「さっき電話があった。お前の姿が見えたと言って。でも、受け入れられなくて、酷いことをしたと泣いていた・・・」
 「どうして、私はここにいるの・・・?」
 ユリアは、あの時確かに、ギルの腕の中で冷たくなっていくのを感じた。
 そして、思い出した。
 命の灯し火が消えることを悟ったその一瞬前、どうしても言いたかった一言を。
 「ギル・・・、私・・・、言わなきゃいけないことがあるわ・・・」
 「だめだ、言ったらだめだ。言ったらお前はきっと消えてしまう。二度と俺の前から消えないでくれ・・・!!」
 「・・・だめよ、ギル」
 ユリアの頬からも涙が伝った。
 それは冷たいものではなく、温かなものだった。
 そしてユリアは、伝えることができなかった一言を口にした。
 「ギル・・・、幸せになって・・・」
 この一言を言わせてほしいと、ユリアはあのとき神に祈った。
 それが、叶えられたのだろう。
 「お前なしで、どうやって幸せになれって言うんだよ!!」
 ギルが絶叫するような声を出した。
 暗がりで一人叫ぶギルに、好奇の視線が向けられ始めていたが、ギルは気にも留めなかった。
 「大丈夫よ、あなたなら」
 ユリアは、時間が来たのを悟った。
 ああ、神様、この一言を言わせてくれて、ありがとう。
 この時間をありがとう。
 「泣かないで、ギル。私はいなくなるけど、あなたの人生はまだまだ続くの。絶対に幸せになれる日が来るから」
 「そんな日来るわけないだろう!!」
 「来るわ。必ず。・・・私はあなたと出逢えて幸せだった・・・。ありがとう、ギル」
 ユリアがそう言った次の瞬間、ギルの腕から彼女を抱きしめていた感覚が抜け去った。
 「ユリアっ!!」
 「悲しませて、ごめんなさい。でも、また笑える日が来るから」
 夜空に咲く大輪の花にとけて、ユリアの姿も消えつつあった。
 「今までありがとう・・・愛してるわ、ギル・・・。必ず幸せに・・・・・・・・・」
 「ユリア・・・っ!!!」
 そしてギルは、一人になった。

 「・・・じゃあ、本物だったわけだ」
 次の日の休憩中、ギルは職場の仲間に昨夜のことを洗いざらい話して聞かせた。
 「あいつ・・・、俺の目の前で二度も・・・。人の気も知らないで・・・」
 ギルは必死に涙をかみ殺しながら言った。
 「ユリアはそれだけお前に伝えたかったんだろ」
 「本当、あいつなしで、どうやって幸せになんかなれるんだよ」
 「お前がいつまでも不幸なままでいたら、それこそユリアは悲しむ。幸せってのは自分で掴むもんだろ。前、向けよ」
 「・・・簡単に言うなよ」
 ギルは苦笑交じりに立ち上がったが、仲間から背けた頬を、再び涙が伝った。

 その後、ギルの前には二度とユリアは現れなかった。
 それでも、ギルは必死に前を向いた。
 あいつが生きられなかった分まで、俺が――。

A Glacing Light

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