第二話

2015.02.19 (Thu)
 ユリアはギルの家に来て、不思議に思ったことがあった。
 写真だ。
 ギルはなぜか、やたらとユリアの写真を飾りまくっていた。
 彼はそんな性格ではないし、一緒に写真を撮ろうとすると恥ずかしがって逃げ回るくらいなのに、この家に飾られている写真は、みなユリアとギルが一緒に写っていた。
 「どういう心境の変化かしら・・・」
 ユリアは首をかしげながらギルの家を出て、鍵をかけた。
 昼食をとりがてら、海の近くを散歩しようとしたのだが、まったく空腹を感じない。
 持ち合わせも多いわけではないので、ケバブの屋台を横目に、ショッピングモールに足を踏み入れた。
 しばらく数々の店を冷やかして回って、最後の店から出ると、カラフルな広告が目に飛び込んできた。
 「花火・・・!」
 今日はこの近くの海辺で花火大会があるそうだ。
 「絶対ギルと来よう!」
 ユリアは目をキラキラさせてその場を後にした。
 
 夕方、ギルはアパートの明かりが点いているのを見て、本当にユリアがいるのだと実感した。
 ――・・・・・・。
 複雑な気分でドアノブを回すと、かちりと音がしてドアが開いた。
 ユリアが、いるはずだ。
 「・・・ユリア?」
 玄関で躊躇いがちに声をかけてみると、
 「あ、お帰りなさい!」
 と、ユリアが小走りにやってきた。
 そうだ。こうして彼女は俺の目の前にいるじゃないか。
 あれこそが悪い夢じゃなかったのか・・・。
 「ギル、出かける支度して!今すぐ!!」
 「は?」
 「海辺で花火があるのよ!行きましょう!」
 帰ってきて一分もしないうちに、ギルは再び外に押し出された。
 
 ほどなくして、二人は花火が見える海辺にやってきた。
 「わあっ!もう始まってる!!」
 ユリアは手近なテトラポットに腰掛けながら、色鮮やかに彩られた空を見上げた。
 近くには昼間見かけたようなケバブや飲み物の屋台が出ていた。
 「ねえ、ギル、夕食まだでしょ?私買ってきてあげる」
 「えっ、おい、ユリア!!」
 ギルは慌てて声をかけた。
 「何?すごい声出すからみんなあなたのこと見てるわよ」
 「食事は・・・いいよ」
 「そう?でも私ラッシーが飲みたいの!待ってて」
 「ユリ・・・!」
 そのとき、ギルの携帯電話が鳴った。
 ユリアの母からだった。
 「もしもし?」
 「ギル?ああ、ギル・・・」
 電話の向こうでは、ユリアの母が泣いていた。
 ユリアの母の話を聞き終えたギルは、ようやく口を開いた。
 「ユリアは今、俺のところにいます」
 「じゃあ・・・!!」
 そこまで言って、ギルはユリアが歩いていった方向を振り返った。
 
 ユリアは飲み物を求めて屋台に近づいて行った。
 すると、目の前をするするっと小さな男の子が走って行った。
 しかし、そこへ、車がすごいスピードで突っ込んできた。
 「あっ・・・!!!」
 ユリアは考える間もなく男の子の方へ駆け出していた。

 それを見たギルは、血相を変えて電話を放り出し、ユリアの元へ走った。
 そして、車が男の子とユリアをぎりぎりに避けていったところを抱きとめた。
 
 「いったー・・・」
 ユリアは一瞬何が起こったのかわからず、ただギルの腕の中で呻き声をあげた。
 ギルは、ずっと彼女を抱きしめたまま動かなかった。
 「ギル?大丈夫よ――」
 「・・・ぬな・・・」
 「え?」
 ギルが震えるような声を絞り出し、ユリアは聞き返した。
 「二度も死ぬな!!」

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