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セレスティア 2

2013.08.05 (Mon)
 ジェフはエレナを見つけることができず、エレナの盗賊仲間の元へ連れて来られた。
 仲間の他に、エレナが農民を襲わないと誓わせた、他の盗賊団の面々もおり、かなりの人数がいた。
 エレナが所属していた盗賊団のカシラの、ジェイクという男が、ウィルがやってきたのを見て声を上げた。
 「ウィル!」
 彼らは船の一件を聞きつけ、エレナやウィルを助けるべく都の外れのこの街までやって来たのだ。
 「ジェイク、恩に着る」
 そう言うなりウィルは振り向きざまにジェフを殴りつけた。
 「エレナに何を言った!!」
 殴り飛ばされたジェフは、ゆっくりと立ち上がった。
 「・・・エレナは、エレナではない。セレスティアという名の王女だ」
 「何を――」
 「ウィル、お前はエレナの背中を見ただろう。傷一つなかったのを見て驚いたんだろ?」
 ウィルは言葉に詰まった。
 「俺も、王族の人間だ」
 そう言うと、ジェフは自分の腕を切って見せた。
 見る見るうちに傷はなくなり、その皮膚は滑らかに戻った。
 それを見ていた盗賊たちは目を見張った。
 「お前たちは、エレナに襲われて全員が負けたんだろう?一人の娘に。おかしいと思わないか?それは全て、エレナが授かった神からの恩寵のお陰だ。優れた頭脳、身体能力、驚異的な自然治癒力――」
 盗賊たちは顔を見合わせた。
 「エレナはこの先どうなるんだ?」
 ウィルが言った。
 「王位を継ぎ、この国を治めることはないだろう。彼女は全てを海へ還すと予言されている」
 「どういう意味だ?」
 「・・・この国を終わらせるという意味だ」
 この国の滅亡か、あるいは――。
 「エレナは、あいつを最も愛している人間の手によって殺されなければならない」
 「何だそれ――」
 ジェフは息をついて話し始めた。
 いつかサルトゥスでも話した話だ。
 しかし、「探し物」を見つけたお陰で、いまではより深く話せるようになっていた。
 長い話が終わると、全員が顔を見合わせた。
 嘘のような、しかし説得力のある話だった。
 「エレナは、そんな残酷な運命から逃げられないのか?」
 「・・・恐らく。だが、俺は、あいつを逃がしてやりたい。何もかも忘れて、どこか遠く離れた地へ――」
 ジェフは固く拳を握り締めた。
 「俺もだ」
 「俺も」
 男達は口々に言った。
 「同じ盗賊でも、孤児院に寄付する為に盗賊なんて真似してるなんて話、聞いたことねえ」
 「ああ。天使がいるとしたらあいつだ」
 「みんなであいつを解放してやろう」
 
 噂はすぐに広まった。
 各農村部にも、かいつまんでだが、エレナの行いの話は伝わっていた。
 エレナが暴虐無尽だった盗賊たちを治め、農村は決して襲わないよう誓わせたのだ。
 そのエレナ本人が、今は囚われの身になっていると聞いて、多くのものが武器を携えて集まってきた。
 ベルスの王国が始まって以来の暴動が起きようとしている。
 戦力は、多勢に無勢。
 しかし、目標は王族に勝つことではない。
 エレナの解放だ。
 「もし――」
 ウィルがジェフに言った。
 「あいつを殺すというのなら、それはあんたの使命だ」
 「お前こそ、エレナを愛してるんじゃないのか?」
 ジェフは目を見開いた。
 「ああ。だがあんたの思いには負ける。・・・見てれば分かる」
 それほどまでに、自分はエレナを――。
 
 「奇襲をかけるなら明朝だ。みんな、まず自分の安全を確保して動け」
 「そんなことしてたらエレナはどうなっちまうか――」
 「俺たちはどうなってもかまわない。エレナを救うだけだ」
 
 まだ日の昇らぬ薄明かりの中、民衆は走り出した。
 行く先々の、王族への不満を抱えた人間たちにも勇気を与え、望む者は戦力に加えた。
 民衆の波は次第に大きく強くなり、暴動が、始まった。

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