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セレスティア 1

2013.08.02 (Fri)
 「・・・何ですって・・・?」
 エレナは意味が分からないという顔をした。
 「何を言って・・・」
 「肖像画を見ろ」
 「・・・・・・」
 エレナは言われたとおりに肖像画を見回した。
 「歴代の王たちの肖像画だ。・・・女王の顔を見比べてみろ」
 女王の肖像画は全部で四枚あった。
 そして、その全てがみな、自分と同じ顔をしていた。
 「・・・嘘・・・」
 「お前は、この国に生まれた五番目の王女だ」
 「嘘よ」
 「なぜお前がそれほどまでに明晰な頭脳を持っていると思う?王家の人間だからだ。なぜあの優れた身体能力を持っていると思う?王家の人間だからだ。――なぜたった今鞭打を受け、血を流したのに傷がないと思う?王家の人間だからだ」
 エレナは自分の背中に触った。
 血の跡はあるが、肌は滑らかで、痛みもすでに消えていた。
 「なぜ俺がお前を探して十五年も放浪したか――お前を死なせるわけにいかないからだ」
 エレナは愕然とした。
 ジェフに言われれば言われるほど、自分には王族の特徴が当て嵌まる――。
 「お前は満月の晩、必ず夢を見るだろう。戦場の夢だ」
 「どうしてそれを――」
 「王家の女性は皆、初代の女王リアーナの生まれ変わりだといわれている。リアーナはファリガーナとの契約を結んだ、最初の王にして女王だ」
 「・・・やめて」
 「リアーナの一族はこの地で人の血を流し、神の怒りを買った。その戦場の夢だ」
 「やめて」
 「王女は約五百年おきに生まれるといわれている。お前が生まれたのは王朝が始まってから二千五百年目のことだ」
 「もうやめて!!聞きたくない!!」
 淡々と話し続けるジェフに、エレナは泣きながら叫んだ。
 否定のしようがなかった。二千年間、同じ肖像画を描き続けるはずがない。
 その絵は他人の空似どころか自分に生き写しだった。
 「嘘よ・・・そんなの・・・私はアールとアリスの娘よ・・・」
 「エレナ、受け入れてくれ」
 ジェフはエレナに手を伸ばしたが、その手はすぐに振り払われた。
 「だって・・・!私・・・私っ・・・!!」
 「お前は、王女なんだ」

 二人は城から抜け出て、城塞を抜けた。
 先に逃がした男達は、この先の倉庫に隠れているはずだ。
 倉庫に着くと、やはり男たちが隠れていて、ジェフが扉を開けるとギクッと身を潜めた。
 「放して!!」
 エレナはジェフに引かれていた手を振り払った。
 「エレナ」
 「一人にして!放っておいて!!」
 「エレナは・・・?」
 ウィルが尋ねた。
 「今はまだ言えない。日が暮れるまで、ここにいるぞ」
 「エレナ・・・」
 ウィルが近寄ろうとすると、エレナは「来ないで!」と叫んだ。
 「今は一人にしてやってくれ」
 ジェフは罪悪感で一杯だった。
 しかし、いつかは伝えねばならぬ真実だった。
 「ジェフ、チャドの傷の具合が酷いんだ」
 チャドはすでに、右目の視力を失っていた。ぐったりとして、身動き一つしなかった。
 「薬草を持ってくる。動くなよ」
 ジェフはそう言い残して、チャドの傷の為に薬草を探しに出た。

 戻ってくると、男たちが騒いでいた。
 「だいたいこの状況でどうしてあんな無謀なこと――」
 「ジェフ!!」
 ウィルがジェフに詰め寄った。
 「エレナに何言ったんだ!?」
 「何――?」
 「エレナは急に一人で飛び出していった!!ついてくるなと言って!!」
 「何だと――!?」
 ジェフは薬草の使い方を教えると、エレナを探して町に出た。
 しかし、どこを見ても人だらけで、その姿を見つけることもできなかった。

 数刻前――。
 エレナは倉庫を飛び出した。
 嘘だと思いたかった。
 自分が憎むべき王族の、しかも王家の人間だなどと信じたくなかった。
 全てを振り切るように走り続けた。
 しかし――。
 「!?」
 急にガシッと腕をつかまれた。
 「探しましたよ、姫」
 クレストだった。
 「私は姫なんかじゃ――やめて!放して!!何するの!!」
 「国王陛下と謁見していただきます」
 「何で私が――放して!!」
 エレナは再び城に連れ戻された。
 そこで、裂けた服を脱がされ、豪奢なドレスを着せられようとしていた。
 「姫様、どうかそんなに暴れずに――」
 侍女が困ったように言った。
 「姫様って言わないで!!」
 「畏まりました。畏まりましたから、どうかお静かに――」
 エレナは懇願され、ようやく服を着せられた。
 謁見の間には、国王が座って待っていた。
 エレナは無理やり跪かせられた。
 「ディーウィティア王妃の娘御、セレスティア王女は生きておいででした」
 コルニクスが進み出た。
 「あのとき殺したはずの・・・我が娘か・・・」
 「私はあんたなんかの娘じゃ――っ!?」
 エレナは勢いよく立ち上がろうとしたが、衛兵の槍によって再び跪かせられた。
 「口をお慎みください。手荒な真似はしたくありません」
 しかし、国王ウィリデウスは言った。
 その胸には赤い花を象った紋章が揺れていた。
 「罪人の印を持て!!」
 すぐに真っ赤に焼けた罪人に押される焼印が用意された。
 「火傷の跡が残らぬほどの治癒力を持つものは王家の人間のほかにない」
 ウィリデウスはそれを、エレナの胸元に押しつけた。
 「いやあああっ!!!」
 痛みのあまり、エレナは悲鳴を上げた。
 肉のこげる音と臭い。
 しかし、ウィリデウスが焼印を離すと、エレナの肌は白く美しいままだった。
 「なるほど・・・」
 ウィリデウスは納得したように頷いた。
 「美しく成長したものだ。我が娘でなければ後宮へ入れてやってもよかったものを――」
 ウィリデウスはエレナの顎を持ち上げ、ニヤリと笑った。
 エレナは浅い息をしながらも、周囲の人間の背筋をゾッとさせるほどの殺気を放った。
 しかしウィリデウスは意に介する様子もなく、両手を挙げて叫んだ。
 「我が娘が戻った!!宴を張れ!!諸外国へ知らせを出せ!!最も高貴なる貢物をした者に我が娘をくれてやるとな!!」
 「何を勝手なことを!!」
 エレナが叫んだが、謁見の間に広まった歓声の中にその声は没してしまった。


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