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自由の船 3

2013.07.28 (Sun)
 ジェフは岸に上がると、全力で馬車を追った。
 しかし馬もみな取り上げられてしまった今は、どうすることもできなかった。
 「くそっ・・・」

 捕らえられた者たちは後ろ手に手を縛られ、檻のような荷馬車にくくりつけられて揺られていた。
 エレナはチャドが顔から夥しい血を流しているのが気がかりでならなかったが、ウィルはただ気を失っているようだった。
 「ウィル、ウィル」
 エレナが何度か呼びかけると、ウィルはうっすらと目を開けた。
 「ここは――。どうなったんだ?」
 「私のアルフェンドラの知り合いがチャドを誘っているのを立ち聞きしていて、それを密告したのよ・・・」
 謝っても謝りきれない、と、エレナは涙を流した。
 仲間たちはまだ気を失っている。
 朝日が差し込んできていた。
 ウィルは周りを見回し、仲間を確認した。
 「あいつは・・・、ジェフは?」
 「わからないわ。ジェフはまだ海にいたけど、私とチャドは先に岸に上がったの。そこを捕まって・・・」
 「・・・俺たちは、たぶん騎士団の本部に連れて行かれるんだろうな」
 「ええ、そうだと思うわ」
 「俺たちの仲間で逃げ切れたやつはいないみたいだな・・・。望みはジェフだけだな」
 「馬車に乗せられる一瞬前、馬を繋いでいたところを見たんだけど、一頭もいなかったわ・・・」
 エレナは必死に身を捩って縄を解こうとしていたが、固く縛られたそれは解けることはなかった。
 「やめろ。ただでさえお前濡れたままで体力使ってるんだから」
 ウィルは気遣わしげに言った。
 「でも私のせいで・・・」
 「お前のせいじゃない」
 それだけがウィルに言える慰めの言葉だった。
 「私のせいよ。もっと気をつけるべきだったわ・・・」
 エレナとしても、まったく予期していなかった。アルフェンドラの仲間に裏切られることになろうとは。
 そのとき、不意に馬車が足を止め、騎士団の人間が降りてきた。
 「おい、うるさいぞ」
 そして全員に猿轡を噛ませ、黙らせた。
 こうして彼らは水も食料もほとんど与えられず、長い時間をかけて騎士団の本部に連行されて行った。

 騎士団の本部に着くと、それぞれが鎖に繋がれ、尋問を受けた。
 「どうやって船を建造した!?発案者は誰だ!?」
 長時間に及ぶ尋問だったが、誰も口を割ろうとしなかった。
 そこで鞭打が始まった。
 全員が服の背中を裂かれ、一人ずつ、その拷問を受けていった。
 「誰が発案者だ!?即刻答えよ!!」
 ピシャッ!!
 しかし、誰も答えなかった。
 そこで尋問官は、捕らえられた男たちの前にエレナを引きずり出した。
 「やめろ!!」
 ウィルが叫んだ。
 しかし尋問官はエレナの服の背中を切り裂き、鞭で打ちつけた。
 「っ!!!」
 エレナの背中が弓なりに反り、血が滲む。
 「やめろ!!相手は女だぞ!!」
 「ならば答えよ!!発案者は誰だ!?どうやって船を建造した!?木材はどこから仕入れた!?」
 ピシャッ!!ピシャッ!!
 尋問官はエレナを打ち続けた。
 答えれば、想像を絶するほど多くの人間に危害が及ぶ。
 決して答えるものか。
 この命が果てようとも――。
 エレナは唇をかんで続く拷問をその身に受けた。
 しかし、声も上げずにぐったりと鞭に打たれ続けるエレナを見て、男たちの心は揺れ動き始めた。
 そのとき。
 
 ガタガタガタッ!!

 地下牢の階段を、衛兵が血を流して転がり落ちてきた。
 「ジェフ!!!」
 地下牢にいた衛兵たちが一斉にジェフに襲い掛かったが、その力の差は歴然だった。
 ジェフは衛兵をなぎ倒し、牢を開けた。
 「ジェフ!!」
 「ここを出るぞ。早く!!」
 一人ずつ鎖を外してやりながら、ジェフは怒鳴った。
 「エレナ、立てるか?」
 「ジェフ・・・」
 エレナはぐったりと顔を上げた。
 エレナの背中から流れた血は腰にまで流れていた。
 しかし、破れた服の隙間から見える背中の肌は滑らかで、傷一つついていなかった。
 「エレナ――どうして――傷が・・・!」
 その背中を見たウィルが唖然とした。
 「その話は後だ。行くぞ!!」
 ジェフはエレナに外套を羽織らせ、肩を貸し、皆を率いて地上へ出ようとした。
 そのとき――。
 「ジェフ――」
 唖然とした表情のクレストだった。
 「生きていたんですか」
 「クレスト、そこをどけ」
 ジェフは剣を突きつけながら言った。
 クレストも剣を抜いた。
 「お前と争いたくない」
 クレストは、今は気丈に立っているエレナに目を向けた。
 そして――。
 「王女・・・!!」
 「どけ!!」
 ジェフはクレストを気絶させ、地上へ出た。
 夕暮れ時だった。
 捕らえられていたのは全部で五人。
 四人の男たちにジェフは言った。
 「ここから東へ走れば抜け道がある!!その先の倉庫へ先に行け!!」
 「あんたとエレナはどうするんだ!?」
 ウィルが言った。
 「城に用がある。今は話してる暇はない!行け!!」
 「城に用って――ジェフ!?」
 ジェフは何も言わずにエレナの手をつかみ、反対方向へ走り出した。
 
 ジェフがエレナを連れてきたのは、いつかコルニクスがクレストに内密の命を下していた肖像画庫だった。
 「こんなところに何の用が――」
 「エレナ。よく聞け」
 ジェフは部屋に鍵をかけながら言った。
 「お前は、この国の王女、セレスティアだ」

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