スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第一話

2015.02.16 (Mon)
 「・・・で、俺のところに来たって?」
 ギルはソファにちょこんと座ったユリアに問いかけた。
 「だって、そんな言い方ないと思わない?」
 「でもお前、それ――」
 「何よ」
 ユリアはむすっと唇を尖らせた。
 「あなたも母さんの味方するつもり?」
 「・・・・・・」
 「・・・もしかしたら」
 ユリアはふと目を伏せた。
 「母さんも恋人ができたから、私のことが邪魔になったのかもしれないわね」
 「それはない」
 ギルは即答した。
 「絶対にない」
 「何でそう言い切れるのよ」
 「それは・・・」
 「とにかく、しばらくでいいから、ここにいさせて?お願い」
 ギルはまだ何か言いたそうにしていたが、ユリアの懇願に負けたのか、やがて首を縦に振った。

 翌朝ギルが目を覚ますと、ユリアが隣に寝ていた。
 ――夢じゃなかったんだな・・・。
 眠れる隣の美女を眺めながら、ギルはその髪を梳いてみた。
 ユリアが起きる気配はない。
 ――夢・・・じゃ、ない、よな・・・。
 どれほど会いたかったか。
 ユリアにはきっと理解できないだろうほどのこの思い。
 すーすーと寝息を立てるユリアをもう一度確認してから、ギルは起き上がって身支度を始めた。

 わずかな衣擦れの音に、ユリアは目を覚ました。
 「もう仕事の時間?」
 「・・・起きたのか」
 ユリアは目をこすりながら起き上がった。
 その顔にはまだどこかあどけなさが残っていた。
 「お前、ちょっとこれ持ってみて」
 ギルは唐突にグラスをユリアに差し出した。
 「は?」
 ユリアは言われるがまま、そのグラスを受け取った。
 「何?」
 「・・・いや。・・・鍵、置いていくから。出かけるときは鍵、頼む」
 「ええ。ありがとう」
 「そう遅くならないうちに帰るから」
 ギルがそう言うと、ユリアはふふっと笑って立ち上がった。
 「結婚したら、毎朝こんな感じなのかしら」
 「・・・・・・」
 ギルは何も言わずにそっとユリアの額に唇を落とし、出かけて行った。

 「ユリアが・・・?」
 ギルの職場仲間が、愕然としたように彼の言葉を繰り返した。
 「お前、疲れてるんじゃないのか?」
 「俺もそう思ったんだけどさ、どうもそうじゃないっぽいんだよ」
 「俺は信じない。ユリアがこんなところにいるわけがない」
 「いやだから俺もそう思ったんだけどさ」
 「ギル、目ぇ覚ませよ。気持ちはわかるけど・・・」
 ギルは仲間の言葉を半分に聞きながら、目の前の卵の山を持ち上げた。
 わかってる。わかってるんだ。
 でも目の前にいるんだ。
 俺の婚約者が・・・。


前へ       次へ



にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://rainy0dusk.blog.fc2.com/tb.php/840-d29c6c6d
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。