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アルフェンドラ 4

2013.07.13 (Sat)
 次の日は、一座の休日だった。
 エレナはいつも通りの服に着替えてやってきた。
 「昨日、途中からいなくなったわね」
 「ああ」
 「サーシャもいなかったわ。・・・一緒だったの?」
 「いや」
 ジェフは素っ気ない返事をした。
 「何?どうかしたの?」
 「何も」
 ジェフの心がぐらぐらと揺れる。
 何を考えていたんだ俺は・・・!
 一方エレナも、ジェフの様子が明らかにおかしいことに気付き、また、こんな風に拒絶されたことにひどく心を痛めた。しかしそれでも何とか平静を装い、
 「そう」
 と息をついた。それから話を逸らそうとジェフに声をかけた。
 「ねえ、ずっと聞こうと思ってたんだけど」
 「何だ?」
 「チャドって今どうしてるのかしら・・・?生きてるのかしら・・・」
 「あいつは無事だ。今も変わっていなければ、この近くの街にいるはずだ」
 「本当!?」
 エレナは嬉しそうな声を上げた。
 「会いたいわ」
 「・・・チャドも、お前に会いたいだろう」
 ジェフは立ち上がった。
 「どこへ行くの?」
 「チャドを連れてきてやる」
 「なら私も一緒に――」
 「お前は稽古があるだろう」
 ぶっきらぼうにそう言ってから、ジェフはしまったと思った。
 「・・・そうね」
 エレナはなぜジェフがこんな態度を取るのか、本当に理解できず、そう言うしかなかった。
 「待ってろ。すぐ戻る」
 ジェフはエレナの頭をポンポンと撫でて、馬に乗って出て行った。
 今はエレナから離れ、頭を冷やしたかった。

 「チャド」
 「ぎゃああああああっ!!」
 とうもろこし畑で作業をしていたチャドは、背後から突然声をかけられて悲鳴を上げた。
 ジェフがその頭をゴツンと叩いた。
 「ジェフ!!」
 チャドはひそひそ声になって、ジェフに抱きついた。
 「おい、気味悪いからよせ」
 ジェフは笑ってチャドを引き剥がした。
 「どうしたんだ、こんな昼間に!?」
 「会わせたい奴がいる。ハンスには話をつけてきた。行くか?」
 何だか分からないが、ジェフについていって後悔したことはない。チャドは頷いた。

 アルフェンドラのテントに着くと、チャドが言った。
 「吟遊詩人に俺、知り合いなんていないよ?」
 「まあいいから。見てみろ」
 ジェフは、外の稽古場で曲に合わせて舞っているエレナを指差した。
 「・・・誰?」
 「エレナだ」
 「エレナ!?」
 その声に気付いたエレナが叫んだ。
 「チャド!?」
 エレナは再び急に踊るのをやめ、アランの肝を潰した。
 「わーーーーっ!!エレナだ!!」
 「チャド!!」
 二人は抱き締めあって再会を喜んだ。
 「すごい!ジェフ、エレナを見つけ出したんだ!?エレナ、大人になったんだね!!」
 「あなたはあまり変わらないのね、チャド。アラン、今日の稽古はここまででいいかしら?懐かしい人に会ったの」
 「ああ、いいぜ」
 ジェフはなるべく二人を見ないようにしていた。
 
 「ふぅん。それで今はここにいるんだね」
 チャドがお茶をご馳走になりながら言った。
 「ええ。でも、そう長くはいないつもりよ」
 「ジェフは何してるの?」
 「フラフラしてるわ。今日は何だか機嫌が悪いみたい」
 エレナは肩をすくめた。
 「でもエレナ」
 チャドは笑った。
 「昔はあんなにジェフのこと嫌いだったのに、今こんなに一緒にいるなんて、僕には信じられないよ」
 エレナはサッと赤くなった。
 「今は今よ」
 「アリスとアールも、君があんまりジェフになつかないもんだから頭抱えて悩んでたんだよ」
 「そんな昔のこと・・・」
 エレナも笑った。
 「チャドはあの後、サルトゥスへは行ったの?」
 「・・・いいや。君が攫われてから、僕は今の生活をずっと続けてる。って、君はサルトゥスへ入ったのかい?」
 「ええ、一度だけ。父さんと母さんの医学書が焼け残っていて、とても役に立ったわ・・・。チャドは大陸の出身なんでしょう?帰りたくはならないの?」
 「そうだね・・・」
 チャドは少し考えてから言った。
 「帰りたいよ。帰って、親孝行したいな」
 「そう・・・私もよ」
 「わーっ!ごめん!そういう意味じゃないんだ!!」
 チャドは慌てて手を振り回した。
 「いいの。わかってるわ」
 エレナは笑った。
 「そうだ。あのね、チャド――」

 エレナは密造している船のことをひそひそ声で話して聞かせた。
 「それ、本当?」
 「ええ。今ならまだ間に合うわ。みんなに掛け合ってみましょうか」
 「本当に!?」
 「しーっ!明日にでも行ってみましょう」
 
 それを、聞き耳を立てていた人物がいた。
 サーシャだった。

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