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出国を禁ず

2013.06.22 (Sat)
 ジェフは、ウィルとエレナについてオプタリエの外へ抜け出た。
 エレナはいつもこんな危険な真似ばかりしてるのだろうか。
 ジェフはエレナには危機感というものが備わっていないのだろうかと思った。
 しばらく馬を走らせ、着いた場所は、入り組んだ入り江の洞窟だった。
 「ここは?」
 「船を作っているの」
 「船?」
 「大陸への船よ。この国には希望がないから・・・。だからと言って、まともに船に乗るお金もない人たちが集まって、船を作っているの」
 「そっちの方が大変じゃないか?」
 「ええ・・・でも、ここにいる人たちは、あの孤児院の出身の人が多いわ。それに、船を作ることは別に禁止されていないでしょう?」
 「エレナ」
 船影から、一人の大きな男がやって来た。
 「久しぶりね、アダム。帆ができたんですって?」
 「ああ。ようやくだ。出航できる日も遠くない」
 アダムは大きな帆を運んでいる数人を顎でしゃくった。
 「そいつは?」
 アダムはジェフを見た。
 「私の知り合いよ。大丈夫、喋ったりしない人だから」
 「なんだ、お前にもついに男ができたのかと」
 にやりとしたアダムの腕を、エレナは思い切りひっぱたいた。

 ジェフは、船の見学をしているエレナを眺めていた。
 そこへ、ウィルがやって来た。
 「本当に、エレナとは何もないのか?」
 「? ああ」
 「・・・・・・」
 ウィルは、相当妬いているようだった。
 「あいつは、必要以上に人と馴れ合おうとしない。俺ともそうだ。結婚もしないと言っていた。愛した者が死んでいくことに耐えられないからと言って・・・」
 あんなに子供好きなのに、とウィルは言った。
 「それなのにあんたは、なぜこんなにエレナと親しいんだ?あんな顔をしてるエレナは初めて見た」
 「なぜと言われてもな・・・」
 ジェフが返答に困っているときだった。
 「大変だ!!」と、誰かが走りこんできた。
 「国から新しい勅令が出た――」

 エレナとジェフはすぐに馬に乗り、近くの街中へ入った。
 大通りに人だかりができている。
 二人は人ごみを掻き分け、掲示された勅令を読んだ。
 「「ベルスの民は何人も出国を禁ず」・・・どういうこと!?」
 「財政難だ」
 ジェフが呟くように言った。
 「国から人が出すぎたな・・・。そのせいで税を巻き上げるにも限界が来た。これ以上人が減らないように、苦肉の策だ。以前にも発令されたことがある」
 「そんな・・・じゃあみんなのしていることは・・・」
 「見つかれば違法になる」
 「・・・見つからないわ」
 エレナは自分に言い聞かせるように言った。
 「あそこは港と反対側の岸辺よ。・・・騎士団も来ない。だから、大丈夫よ・・・」
 それでも、エレナは不安そうに唇を噛んだ。

 ジェフとエレナは帰路に着いたが、会話は少なかった。
 ジェフは、今民の思いを形にし、民衆を救ってやれるのはエレナだと思っていた。
 エレナを都へ連れ戻し、その王位継承権を明らかにすれば――。
 それでたとえ自分が捕らえられ、死刑になっても。
 ジェフは、馬を止めた。
 「エレナ」
 「何?」
 エレナも馬を止め、振り向いた。
 「都へ行こう」
 「え?」
 「お前は――」
 だめだ。
 説得力がない。
 今突然、お前は王位を継ぐものだと言っても、何の説得力もない。
 それに今のエレナはひどく傷ついているように見えた。
 あの船を作るのに、どれほどの労力と時間を費やしたか、エレナは洞窟で自分のことのように嬉しそうに話していた。
 そのとき、ふと、ジェフの視界に入ったものがあった。
 ジェフが幼い頃住んでいたトリストティリスの、最古の教会の屋根だった。
 「私が、何?」
 「いや、何でもない。悪いが、先に帰ってくれ。用を思いついた」
 「・・・都の話は何だったの?」
 「忘れてくれ」
 今は――。
 「寄り道するな。ここは壁のすぐ近くだ」
 「大丈夫よ。ここでは私は顔が通ってるわ」
 「どういう意味だ?」
 「そうね、帰ってきたら話してあげる。あなたはどこへ行くの?」
 「トリストティリス」
 「!!あんたこそ大丈夫なの!?あそここそ無法地帯じゃない!!」
 エレナは驚きを隠せないように言った。
 「俺はあそこで育った」
 「え・・・」
 「帰ったら話してやろう。気をつけろ。日が暮れる」
 ジェフはエレナの剣の腕を信じて、馬首を変えて走り出した。

 二十年近く、ジェフは放浪して歩いたが、故郷へは寄らなかったことを思い出したのだ。
 最古の教会――。
 なぜ立ち入り禁止になったのか、考えもしなかった。
 純粋に、地震で崩れているからだろうか。
 ジェフは数十年ぶりに故郷の地を踏んだ。
 
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