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下戸と酒豪

2014.12.16 (Tue)
 ジェフとエレナが恋仲になって数ヶ月が経ったある日の昼間。
 ジェフは数日前から家を空けていた。
 王族の近況などを調べに街へ下りていたのである。
 エレナの小屋へ帰ってくると、エレナは外で、洗濯物を取り込んでいた。
 その姿にジェフは笑みを漏らし、気配を消して、彼女を背後から抱きすくめた。
 「きゃあっ!?」
 エレナは驚いて洗濯物を取り落とした。
 「遅くなった」
 「びっくりさせないでよ!」
 「気付かなかったのか?」
 「あんたに本気で気配消されたらわかんないわよ!」
 エレナとて決して鈍いわけではない。
 ジェフの気配の消し方がうますぎるのだ。
 「ところで」
 ジェフはエレナの身体を反転させた。
 「恋人の帰宅にお帰りの一言もないのか?」
 毎日一緒にいたのに、ここ数日は会っていなかった。
 エレナはその時間をひどく長く感じていた。
 しかし、驚かされた挙句にそんな言葉を求められた日には、多少なりとも腹が立つ。
 「あんたこそ私に何か言うべきじゃないの?」
 「ただいま」
 素直にそう述べられては、もうやりあう気力も失せてくる。
 「・・・お帰りなさい」
 その言葉を聞くと、ジェフは満足そうに微笑み、ふんわりとエレナに口付けた。
 「酒を買ってきた。飲まないか?」
 「こんな昼間から?」
 「いつ飲んだって変わらないだろう」
 「私、お酒強くなのよ」
 「飲み口のいいものを選んできた。そう強くない」
 ジェフは酒の入った瓶を持ち上げて見せた。
 「仕方ないわね・・・」
 エレナは苦笑して、先にたって小屋へと入っていった。

 
 「嘘つき・・・!」
 エレナはジェフの勧めた酒を一口飲んで、頭を抱えた。
 ジェフが買ってきたのはかなり強い酒で、普通水で薄めて飲むものだった。
 「これくらい、普通だろ」
 ジェフは何でもないような顔をして、一気にマグをあおった。
 彼は相当な酒豪なのである。
 「かなり甘いだろ」
 「甘い・・・けど、強すぎよ」
 エレナはふらふらして立ち上がり、酒を水で薄めた。
 マグにほんの少しいれた酒を飲み終わる頃には、エレナはもはや朦朧としていた。
 それに比べ、ジェフは平然としたもので、
 「大丈夫か?」
 などとエレナに声をかけていた。
 「だい・・・じょう・・・」
 立ち上がろうとして、エレナが倒れかかったところを、ジェフが抱きとめた。
 エレナはすやすやと寝息を立てていた。
 本当に酒が弱いらしい。
 ジェフは苦笑して、エレナを褥に横たえた。
 そのまま立ち去ろうとしたが、これでは苦しかろうと、ブーツを脱がせ、シャツの紐も解いてやった。
 エレナは無意識に大きく息を吸い込んだ。
 そして、ぼんやりと目を覚ました。
 「私・・・」
 「居間で倒れ掛かった。無理に飲ませて悪かったな」
 寝てろ、と言って、ジェフはエレナの頬を撫で、そう言ったが、エレナがその手を捉えた。
 「行かないで・・・」
 ジェフは心臓が止まるかと思った。
 エレナがいまだかつて、こんなに扇情的な声を出したことがあっただろうか、いやない。
 酔っ払いの女の力とは思えないほどの力で、ジェフの腕を引いた。
 ジェフはされるがままに寝台に腰をかけた。
 「ジェフ・・・」
 エレナはやおら半身を起こし、そっとジェフに口付けた。
 「会いたかった・・・」
 ジェフは眩暈がした。
 こんな状況でどうしろというのか。
 その間にも、エレナからの口付けは深くなっていく。
 ジェフはたまらず彼女を押し倒し、深く深く口付けた。
 こんな状態のエレナなど、もう二度と見られないかもしれない。
 ジェフは口付けながら、うっすらと目を開けてエレナを見た。
 長い睫のまぶたはしっかりと閉じられ、素直にジェフを受け入れていた。
 ジェフはエレナのシャツを捲り上げ、その滑らかなわき腹に手を這わせた。
 「やんっ・・・」
 やん!?
 エレナがいまだかつてこんな声を出したことがあっただろうか、いやない。
 ジェフは我に返って上体を起こした。
 こんな状態のエレナを抱くわけには――。
 「やめないで・・・」
 エレナがいまだかつてこんなことを言ったことがあっただろうか、いやない。
 「・・・いいのか?」
 「こんな明るい中・・・だめ・・・」
 どっちだ!!
 ジェフは眩暈を覚えながらも立ち上がろうとした。
 「じゃあ寝て――」
 「行っちゃだめ・・・」
 何なんだ。
 こんな状況で彼女の近くにいて、尚且つ手を出さずにいられる自信など到底なかった。
 「・・・ここにいるなら、抱くぞ」
 「だめ・・・」
 「じゃあ俺は向こうにいる」
 「だめ・・・」
 「どっちだ!!」
 「私が酔ってると思う・・・?」
 「酔っ払い以外の何ものでもないな」
 「酔ってなんかないわ・・・」
 「酔ってるやつほどそう言うんだ」
 「ねえ、お願い、行かないで・・・そばにいて・・・あなたがいない間、時間がすごく長かった・・・会いたかった・・・」
 ジェフは薄目で自分を見上げているエレナをじっと見つめた。
 きっとこれは本心なんだろうな。
 「・・・エレナ、会いたかったのは俺も同じだ。ずっとお前を抱きたかった。俺に離れるなというなら、お前を抱く」
 「・・・・・・」
 エレナは黙り込んでしまった。
 「・・・どうする?」
 ジェフはエレナに覆いかぶさり、囁いた。
 「・・・行かないで・・・」
 「抱いていいのかいけないのか、どっちだ?」
 ここで確認しておかないとあとが怖い。
 エレナの酔いが醒めたときのことだ。
 「・・・抱いて」
 いまだかつて、エレナからこの一言を引き出せたことがあっただろうか、いやない。
 「お前、今言ったこと忘れるなよ。抱いてって言ったからな」
 エレナはこくりと頷いた。
 ジェフは弾かれたように再びエレナに深く口付けた。
 

 初めて昼日中に肌を重ねて、それが終わる頃には夕方になっていた。
 エレナはすやすやと安らかな寝息を立てていた。
 ジェフはその横で何度も彼女の髪を撫でていた。
 しばらくそうしていると、ふっとエレナが目を覚ました。
 「私――」
 「今更覚えてないって言うなよ」
 ジェフは怒鳴られるかと思い、先に予防線を張った。
 「覚えてるわよ・・・」
 エレナは恥ずかしそうに顔を伏せ、ジェフの胸元に擦り寄った。
 「抱いてって言ったのは私よ」
 本当に覚えていたのか。
 ジェフは内心ほっとした。
 「でも」
 急にエレナの声が冷たく低くなった。
 「あんなに強いお酒買ってきたくせに弱いだなんて言う!?」
 エレナはがばっと起き上がり、胸元に毛布を巻きつけた。
 「俺にとってはそう強くないからな」
 「あんたにとって強くなくても普通の人には強すぎるのよ!!」
 王族ってみんながみんな酒豪じゃないんだな、と、ジェフは初めて知った。
 エレナはまだ自分が王女だと知らない。
 「だから無理に飲ませて悪かったと言っただろう」
 「言ってない!そんなこと言ってない!!」
 「お前抱いてくれって言ったことは覚えてるくせにその前は覚えてないのか!?」
 「だって言われてないもの!!」
 「いいや、俺はちゃんと謝った」
 「言って――」
 「もういい、黙れ」
 ジェフはエレナの手を引き、再び自分の腕の中に閉じ込めた。
 「悪かったよ。今度は本当にもっと弱いやつ買ってくるから」
 「・・・お酒は、もういいわ」
 「じゃあ何がいい?」
 「・・・・・・」
 エレナは黙りこくってしまった。
 そんなに高価なものをねだられても、もうそう裕福ではないジェフだ。
 何を言われるのかと思っていたら――。
 「何もいらないから、もっと早く帰ってきて・・・」
 「お前――」
 ジェフはため息を吐いて、エレナの顎を持ち上げ、口付けた。
 そして、再び彼女のわき腹に手を這わせた。
 「ちょっ――」
 「そんなこと言われたら、また抱きたくなるだろう」
 「ってもう無理だから!!」
 「抱いてくれといったのはお前だ」
 「言ったけど!!言ってない!!」
 

 この後エレナは、夜中までさんざんジェフに愛でられることになる。
 もう二度と酒なんか飲むものか――。
 エレナは硬く心に誓った。





何でもランキングでジェフは酒豪だということが判明したので。
エレナさんがここまで酒に弱いとは知りませんでした。
いや、ジェフの買ってきた酒が強かったのか?
何にしろ反語使いまくりで楽しかったです♪


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