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エレナ 3

2013.05.05 (Sun)
 ジェフの熱は、その後もなかなか下がらなかった。
 むしろ上がり続ける一方の日もあった。
 エレナは薬が失敗しているのでは、と不安になっていた。

 ジェフは夜中、朦朧とする意識の中、ひやりと冷たいものを額に感じて目を覚ました。
 エレナが絞った冷たい布を自分の額にのせてくれていた。
 「お前は寝ないのか・・・」
 「目が覚めたの?」
 エレナの声はいつもより幾分優しく感じられた。
 「いいから、眠って・・・。じきに夜が明けるわ・・・」
 囁くような声。
 エレナもこんな声を出すのかと思えるほど美しく聞こえた。
 そのあとも何か言っているのが聞こえた気がしたが、眠りに引き込まれていく中、その言葉を聞き取ることはできなかった。

 数日後。
 カラカラカラカラ――。
 エレナは糸車を回していた。
 ジェフはすっかり回復し、腕の傷も閉じた。
 傷跡は残ったが、ジェフにとって、怪我は腐るほど経験してきたものの、痕になって残るということは初めてだったので、その傷跡というものが新鮮だった。
 そうエレナに言うと、
 「ほんと気味悪いわね、王族って」
 と返された。
 これで自分が王女だと知った日には、エレナは一体どうなってしまうのだろう。
 だが伝えなければ・・・。
 「エレナ――」
 「ねえ」
 エレナはジェフの話を遮った。
 「いつまでいるつもり?」
 「い――」
 「もう治ったでしょう?いつまでいるの?」
 ジェフは返す言葉に困ってしまった。
 これから肝心要の話をしようというときに。
 そのとき、家の扉をノックする音がした。
 「俺が出る」
 「いいから!!」
 エレナの制止も聞かずにジェフが扉を開けると、若い男が立っていた。
 「誰だ」
 「お前こそ誰だ」
 「ウィル」
 エレナが割って入ると、ウィルと呼ばれた男は急に大声を出した。
 「しばらく姿を見せねえから心配してきてやったら男なんか連れ込みやがって!!」
 「この人――」
 エレナが口を挟もうとするが、ウィルは完全に頭にきているようだった。
 「てめえも人の女に手ぇ出しやがって!!」
 「いつ誰があんたの女になったのよ!!」
 エレナがさらに大声を出した。
 「この人がジェフよ!前に話したでしょう!?」
 「何でそいつがこんな所にいるんだよ!!」
 「拾ったのよ!!」
 俺は猫ですか。
 ジェフは完全に蚊帳の外で、若い二人を眺めていた。
 「仕事相手がこの人で・・・、怪我してたから助けてやったのよ。今日にも洗いに行くわ」
 何の話だ?
 ジェフにはさっぱり分からなかった。
 「何の話だ?仕事相手?」
 「そういうわけだから」
 エレナの声が急に冷たくなった。
 「あなたとも今日でお別れね」
 ジェフの言葉を無視してエレナが言った。
 「ちょっと待て」
 「私も忙しいのよ。いつまでもあんたの相手ばっかりしてられないわ」
 「こいつは盗賊だ」
 ウィルが何か勝ち誇ったように説明した。
 「単身のな。あんたは国を追われたのになぜ国の紋章が入った荷馬車に乗ってたんだ?」
 「その話は後よ。ジェフ、出て行って」
 「・・・それは困るな」
 ジェフはさてさてといった風に言った。
 「俺はお前を探して十五年も放浪して歩いた」
 「なぜ・・・?」
 「それはお前がおう――」
 王家の娘だからと、この男の前で言ってもいいものだろうか?
 エレナにも色々と立場があるのでは?
 「私が、何よ」
 「とにかく」
 ジェフは開き直った。
 「俺はもう二度とお前を見失うわけにいかないんだ!」
 その場が凍りついた。
 「・・・やめてよ、気持ち悪い・・・」
 そうじゃない!!
 ジェフは大変な誤解を招いたことに気がついた。
 「いや、そういう意味じゃなくて――」
 「やっぱりてめえエレナに気があんじゃねえかよ!人の女に!!」
 「だから誰があんたの女なのよ!!」
 「ない!!」
 ウィルの言葉に、ジェフとエレナは同時に叫んだ。
 「ならもういいでしょう!?」
 しかしその後、エレナが最大級の声を出した。
 その声はどこか悲しみに満ちていた。
 「私は今は王族専門の盗賊よ。ここにいればあなたにも危害が及ぶ。だからもう出て行って」
 「嫌だと言ったら?」
 ジェフは剣に手をかけた。

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