スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

プロローグ 1

2014.12.01 (Mon)
 お前は覚えているだろうか。
 俺たちはずっとずっと幼いときに出逢っていたことを。
 俺だって、今この瞬間になって思い出したんだ。
 覚えてないだろうな。
 だけど俺にとってはお前が、最初で最後の――。


 First and Last

 
 二十三年前、フリーギダ。
 その年のフリーギダは長雨が続き、主要街道へ繋がる道が土砂崩れを起こして崩落してしまった。
 村人たちはほとんど孤立状態になり、国に復旧費用を払う為、寝る間も惜しんで岩塩の採掘に勤しんでいた。
 そんなある日のこと――。
 「ウィル、いいこと、サルトゥスへ行って、マルヴィナの薬をいただいてきてちょうだい」
 母にそう言われたウィルは妹、マルヴィナの額に手を当てた。
 「熱い・・・」
 「そう、だからお医者様の薬がいるの。私たちは仕事で出かけられないから、ウィル、一人で行けるわね?」
 マルヴィナは生まれたばかりのウィルの妹だ。
 しかし街道が崩れてからというもの、家族全員がろくな食事もできずにいた。
 父も母も坑道に詰め、岩塩を掘りあさる毎日だった。
 とはいえウィルもまだ五歳。
 一人で獣道を使い、隣村のサルトゥスヘ行くには大きな危険を伴った。
 そこへ、男がひょっこり顔を出した。
 「よう。俺は一旦サルトゥスヘ帰るが、何か用はないか?」
 「ルーサー!ちょうどいいところに!ウィルをサルトゥスまで連れて行ってあげて。マルヴィナがひどい熱を出しているの」
 「よし、わかった。ウィル、急ぐぞ」
 言うや否や、ルーサーはウィルの手を握って、山の獣道を登り始めた。
 ルーサーはサルトゥスの人間だが、フリーギダから嫁をもらい、この不幸な時期にめぐり合わせた妻の実家を手伝っていた。
 ルーサーの兄のルーカスの嫁もまたフリーギダの娘だった。
 「ここからは手を使わなきゃ登れない。ウィル、手を離すぞ」
 「大丈夫だよ」
 ウィルはルーサーがいて心強い反面、子ども扱いしないでほしいとも思っていた。
 「ルーサーはいつまでフリーギダにいるんだ?」
 「さあな。リタの実家が落ち着くまでだ」
 リタとはルーサーの妻である。
 「早いとこ街道が復旧してくれるといいんだが・・・」
 ルーサーは一人ごちて、ウィルを先に登らせ、その後から岩山を上って行った。
 
 夕方近く、二人はサルトゥスに入った。
 「アール」
 二人は村のはずれにある施療院へやってきた。
 「ウィル」
 ルーサーが促した。
 「フリーギダから来ました。ウィルです。妹がひどい熱を出していて、薬を分けてもらえませんか」
 「妹さんは何歳なんだい?」
 アールはウィルに座るよう勧めながら尋ねた。
 「まだ一歳にもなっていません。それで連れてくることもできなくて・・・」
 「その熱はいつから?」
 アールは羊皮紙にメモを取りながらウィルの話に耳を傾けた。
 そして、薬棚から薬草をいくつかと、透き通った緑色の液体を取り出し、薬研でこすり合わせ始めた。
 しばらくの後、薬ができあがった。
 「少し薬草の香りが強いから、砂糖を混ぜるといいかもしれない。一緒につけておくから」
 「でも、これっぽっちの塩じゃ、とても・・・」
 「気にすることない。こんなときだ。お互い様だよ」
 アールはウィルの持ってきた岩塩を受け取ろうとせず、ウィルの頭を撫でた。
 「どちらにしろ、今日はもう遅いわ。明日の朝までここでゆっくりしていくといいわ」
 施療院の奥から、金髪の美しい女性が現れた。
 「でも・・・」
 ウィルが遠慮していると、ルーサーが声を上げて笑った。
 「いっちょまえに遠慮か。気にするな!」
 ルーサーはウィルの頭をガシガシと撫でた。
 
 そこでウィルはアールとアリスの施療院で一晩を過ごし、久しぶりの食事にもありつくことができた。

次へ


本編はこちら
赤の紋章タイトルバナー



にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://rainy0dusk.blog.fc2.com/tb.php/736-9fd9e8e5
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。