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エレナ 2

2013.04.29 (Mon)
 次にジェフが目を覚ますと、日はかなり高く上っていた。
 暖炉には小さく火が燃え、自分の傍らにはりんごと飲み物が置かれていた。
 ジェフは腕に再び鋭い痛みを感じた。
 見ると、噛まれた箇所に包帯が巻かれていた。
 包帯を取ってみると、驚くことに、腕に傷ができていた。
 エレナは一体どうやって青蛇への抗体を見つけたのだろう。
 どうやって自分の手当てをしたのだろう。
 ジェフは不思議に思いながら、恐る恐る起き上がってみた。
 まだ眩暈もするが、あの頭痛はなかった。体の震えも治まっている。
 エレナはどこだろう・・・。
 ジェフは表に出た。
 日の光がやたらと眩しく見えた。
 エレナは、厩で昨日自分が乗ってきていた馬車の馬を世話していた。
 「エレナ――」
 ジェフが声を掛けると、エレナは驚いたように叫んだ。
 「ちょっとだめじゃない、まだ起きてきちゃ!!」
 エレナはジェフに駆け寄った。
 「ほんとに体力馬鹿なんだからあんたたちは・・・」
 王女のお前に言われたくない。
 そう思ってから、ふと気がついた。
 エレナは昨日も、ジェフが年をとっていないことに対して「さすがというべきかしら」と言っていた。
 「お前・・・知ってるのか?」
 「何を?」
 「俺を」
 「知ってるわよ。頭おかしくなったの?」
 どうして、どうしてこうなった。
 どうしてこう口悪く成長した。
 「俺が――」
 「紋章官一族だって?」
 「どこで知った!?」
 ジェフは大きな声を出し、途端に再び頭痛に襲われた。
 うめき声を上げると、エレナは呆れたようにため息をついた。
 「だから、まだ起きるのは早いって言ってるのよ。戻りなさい。ああ・・・包帯まで取っちゃって」
 エレナはジェフに肩を貸し、家に入っていった。
 「・・・まだ熱も高いわ。無理しないで寝てないと」
 ジェフの額に手を当ててエレナが言った。
 「でも、何かお腹に入れたほうが良いかしら・・・」
 エレナは竈にあった鍋を温め始めた。
 「どこで知った?」
 ジェフは先程の質問を繰り返した。
 「あんたが紋章官一族だって?」
 「あまりでかい声で紋章官紋章官と言うんじゃない」
 「ここには誰もいないわ。・・・そうね、都の手配書の原本で見つけたわ」
 「都の・・・!?騎士団の本拠地へ入ったのか!?」
 ジェフは度肝を抜かれた。
 「そうよ。ついでだったからあんたの記録に死亡って書いておいたわ。感謝して?あんたはもうこの世にいないのよ」
 「・・・・・・」
 ジェフは目を丸くしたまま何も言うことができなかった。
 そういえば、いつの頃からか自分の手配書を見なくなった気がする。
 時が経ったからではなく、エレナが自分を抹消してくれたから――?
 「なぜそんなことをした」
 「あんたにこの世から消えて欲しかったからよ」
 エレナの声が急に低くなり、真剣みを帯びた。
 「あんたがあのときサルトゥスで剣を揮っていれば、私たち親子もルークも、みんなもまだあそこで平和に暮らしていたかもしれないわ」
 「・・・・・・」
 ジェフには何も返す言葉がなかった。
 確かに、そうだ。
 「なら、なぜ俺を助けた?」
 「毒の実験をしたかったからよ」
 エレナはやれやれとため息を吐きながらやって来た。
 その手にはシチューとパンを乗せた盆があった。
 「はい、どうぞ」
 ぐいっと強引に押し付けるようにジェフに盆を手渡し、エレナはふいっと向こうへ行ってしまった。
 その姿は七つのときと変わらなかった。
 「殺したい相手に、なぜこんな施しをする?蛇毒の実験は済んだはずだろう?」
 「殺したいとは言ってないわ」
 エレナはそっぽを向いたまま返事をした。「昔は思ったけど」
 「今は?」
 「もうそんなに子供じゃないわ」
 エレナはジェフの元へ戻ってきて、腰掛けた。
 その手にはナイフが握られていて、ジェフはギクッとした。
 「何よ。殺したりしないわよこんな小刀で」
 「この流れでそれを持ってこられた日にはビビって当然だろう・・・」
 「殺るならもっと切れ味の悪いナイフでじわじわ殺ってあげるわよ。冗談はいいから早く食べて。冷めるわ」
 冗談に聞こえない。
 ジェフはそう思いながらも大人しく食事をご馳走になった。
 アリスの作る料理とよく似た味だった。
 「なぜ本部へ侵入したんだ?どうやって?」
 「そうね――」
 エレナはリンゴを小さく削り取りながら、ジェフの盆にぽいぽい投げてよこした。
 「私の仲間があんたと同じように賞金首になって、その記録を抹消しに行ったのよ。それだけ」
 「私の仲間って・・・何の仲間だ?」
 あまり聞きたくなかった。
 「仲間は仲間よ。色々いるわ」
 ジェフが食事を終えると、エレナはジェフの手から盆を取り上げた。
 「ほら、レディに対して色々詮索しないの。とりあえず今は寝なさい」
 たしかにエレナはレディ中のレディだ。
 ジェフは昨日の薬を飲まされ、再び眠りについた――。

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