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ウィルの決意

2015.02.27 (Fri)
 噂はすぐに広まった。
 各農村部にも、かいつまんでだが、エレナの行いの話は伝わっていた。
 エレナが暴虐無尽だった盗賊たちを治め、農村は決して襲わないよう誓わせたのだ。
 そのエレナ本人が、今は囚われの身になっていると聞いて、多くの者が武器を携えて集まってきた。
 ベルスの王国が始まって以来の暴動が起きようとしている。
 戦力は、多勢に無勢。
 しかし、目標は王族に勝つことではない。
 エレナの解放だ。

 ウィルは悩みに悩み抜いた。
 しかし、結論は常に一つのところに行き着いた。
 自分にはエレナを殺すことはできない。
 いくらそれがエレナの望みでも、エレナが望むように民が救われることになっても、ウィルには彼女をその手にかけることなど絶対にできないと。
 悩んでいるのはジェフも同じようだった。
 しかし、その瞳は揺らぐことなく、ただ真っ直ぐに前を見つめていた。
 もう彼の中ではその意思は決しているのだろう。
 ウィルはジェフのもとへ行って、口を開いた。
 「もし――、あいつを殺すというのなら、それはあんたの使命だ」
 ウィルの言葉に、ジェフは目を見開いた。
 「お前こそ、エレナを愛してるんじゃないのか?」
 愛してる。
 愛してるさ。
 殺せないほどに。
 「ああ。だがあんたの思いには負ける。・・・見てれば分かる」
 そう。
 ジェフがただ一心に、エレナの望みを叶えようとしていることはもはや明白だった。
 許されるのなら泣きたかった。
 しかし今後もっと泣きたくなるのはエレナとジェフだろう。
 エレナが現在どうしているのか、この事実を知っているのかウィルにはわからなかったが、自分が死ぬことによって民が救われるなら、彼女は喜んで自分の命を手放すだろう。
 そしてジェフも、自分の想いを犠牲にしてでもエレナを殺めるだろう。
 ウィルには到底真似できなかった。
 
 「奇襲をかけるなら明朝だ。みんな、まず自分の安全を確保して動け」
 大方の人数が集まったところで、ジェフが声を出した。
 「そんなことしてたらエレナはどうなっちまうか――」
 「俺たちはどうなってもかまわない。エレナを救うだけだ」
 
 まだ日の昇らぬ薄明かりの中、民衆は走り出した。
 行く先々の、王族への不満を抱えた人間たちにも勇気を与え、望む者は戦力に加えた。
 民衆の波は次第に大きく強くなり、暴動が、始まった。

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