スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

王女の行方 2

2013.04.14 (Sun)
 それから十五年が経った。
 王家では、今だ二人目の世継ぎが生まれなかった。
 心を病んだウィリデウスは、あれほど愛したマグダレーナを役立たずの女と呼び、終いには自殺に追い込んでしまった。
 ウィリデウスはますます動揺し、不安感を募らせた。
 そこで三人目の王妃が娶られたが、やはり子供は生まれなかった。
 コルニクスも内心焦りを感じ始めていた。
 まさか、本当に王女は生きているのではないか――。
 コルニクスは、新たに任命した執政補佐官、クレストを肖像画庫に連れてきた。
 「よいか、これは内々の仕事だ」
 従順なクレストはコルニクスの命を聞き、一礼して立ち去った。
 コルニクスは、忌々しそうに肖像画庫の絵を見回し、自らもその場を後にした。

 一方、クレストは、コルニクスの前では平静を装っていたが、その場を立ち去った後では動悸が止まらなかった。
 ――王女は生きている――?

 「『勤めを果たせ』」

 彼の父親の言葉が脳裏に響いていた。

 
 その頃、ジェフは――。
 いまだエレナの消息は掴めずにいた。
 ジェフはエレナがあの時外国に売り飛ばされていないことだけを祈りながら、各方々を訪ね回り、若い女性をしらみつぶしに探していた。
 王家に次の世継ぎが生まれていないことだけが、ジェフを確固たる信念と共に動かしていた。
 エレナは今頃二十三になる頃だった。
 ――どこにいる・・・。
 ジェフはその日も同じことを思いつつ、各地を訪ね歩いていた。
 生活の資金はどうしたかと言えば、自分と同じ賞金首の連中を捕らえ、顔を隠して連中を売るか、国の情報も得る為に騎士団の下働きもした。
 ジェフがお尋ね者になってから長い時間が経っていたので、今ではそれほど回りを警戒せずにすんでいた。
 厄介なのは、不老長寿の恩寵の為、人相書きが何年経っても当て嵌まってしまうという点だった。
 昼過ぎ、通りかかった酒場で若い騎士を二人見つけた。
 聞き耳を立ててみると――。
 「面倒くせえなあ」
 「ああ。これから王都まで馬車だなんてよ」
 「ただ馬で行くだけならあっという間なのにな」
 王族への献上物を運ぶ仕事らしい。
 ジェフはフードを目深に被り、二人に近付いた。
 「その仕事、俺に売ってもらえないか」
 「ああん?誰だてめえ」
 酒の入った若い騎士はジェフを見上げた。
 「名を名乗れ」
 「名乗るほどの名ではない。ただ王都に入ってみたいだけの浮浪者だ」
 「面倒くせえし、いいか」
 良くないだろう!最近の騎士団はどんな教育をしているんだ!!
 ジェフは心中怒りを覚えたが、今はそれどころではない。
 情報を集める為に王都へ入る恰好の手段を目の前にしているのだ。
 「よし、お前に売ってやんよ。いくらよこす?」
 「これで」
 ジェフは銀貨の入った袋をジャラッとテーブルに置いた。
 「よし。気をつけて行けよ」
 若い騎士は銀貨の袋を改めた。
 「ああ、そうそう」
 もう一人の騎士が言った。
 「この先の森には魔女がいるって話だ」
 「魔女?」
 「ああ。何でも、通る馬車通る馬車みんな消えちまうんだ。御者もな。間違えて魔女の森に入ったら、二度と出られねえって話だ」
 「魔女でもいい女の魔女ならたぶらかされてみてえよなあ」
 下世話な話が始まり、二人が盛り上がってきたところで、ジェフは銀貨の袋を取り戻し、するりと姿を消した。
 
 ジェフはガラガラと馬車を進めていた。
 日も暮れようとする頃、男の子どもを見つけた。
 どこにといえば、高い木の上に。
 どうも降りられなくて困っている様子だ。
 ジェフは馬車を降り、手を貸してやった。
 「おいで」
 男の子は助かったとばかり、ジェフの方に恐る恐る歩みを進めてきた。
 ジェフが男の子をつかまえ、抱き上げたとき、腕に焼けるような痛みが走った。
 「っ!!!」
 青蛇だった。
 文字通りの真っ青な蛇で、この蛇への抗体は薬学医術の発展したこの国ですら未だ見つかっていない。
 子供を地面に下ろしてやると、彼は礼を言うでもなく、逃げるように走って行ってしまった。
 ジェフはすぐに傷口に切り傷を作り、血液ごと毒を吸い出したが、すぐに傷口がふさがってしまう。
 何度も何度も腕を切りつけては毒を吸い出し――。
 それでも、焼けるような痛みは腕から全身へと回り始めた。
 とにかく、次の村まで行こう。
 ジェフは再び馬車に乗った。
 日が暮れると、雨が降り出した。
 最悪だった。
 今では全身がズキズキと痛み、目は霞んでいた。
 そしてさらに――。
 ――最悪だ。
 道端に人が倒れているではないか。
 この雨の中、身じろぎもせずに横たわっている。
 生きているのだろうか?
 
 「この先の森には魔女がいるって話だ」

 先程の若者の言葉が甦る。
 まさか、魔女の仕業でもあるまい。
 「おい」
 ジェフは馬車の上から声をかけた。
 反応がない。
 ジェフはガタガタと震える身体を奮い起こし、馬車から飛び降りた。
 「おい、大丈夫か――」
 倒れていた人間を抱き起こした瞬間――。
 長いナイフが喉元を掠めた。
 ジェフの持って生まれた反射神経で避けることができなければ、今頃は確実に死んでいた。
 チッという舌打ちと共に、その人間は飛び起きて、細身の剣を抜いた。
 盗賊だ――。
 最悪だった。
 ジェフは本能的に剣を抜き、相手と剣を合わせた。
 驚くほど素早い動き。
 「命が惜しくばその荷馬車を置いて行け」
 いや、馬だけは今奪われるわけにはいかない。
 ジェフはガタつく身体で応戦していたが、やがて剣を弾き飛ばされた。
 そんなことは初めてだった。
 毒さえ回っていなければ、こんな盗賊ごときに殺られたりはしないものを――。
 盗賊はドンッとジェフを木に叩きつけ、狙いを定めてその喉元に剣を振り下ろし――。
 ジェフは覚悟した。
 エレナを――、王女を救えなかった。
 この国も――。

 しかし、ジェフは痛みを感じることがなかった。
 不思議に思って目を開けると――。

 「あら、久しぶりね、ジェフ」

前へ       次へ


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://rainy0dusk.blog.fc2.com/tb.php/71-f7afbde2
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。