セレスティア 2

2015.02.25 (Wed)
 「だいたいこの状況でどうしてあんな無謀なこと――」
 仲間がまだ何か言っているのを無視して、ウィルはジェフに詰め寄った。
 「ジェフ!!エレナに何言ったんだ!?」
 「何――?」
 「エレナは急に飛び出して行った!ついてくるなと言って!!」
 「何だと――!?」
 ジェフの表情が一変した。
 そして薬草の使い方を教えると、エレナを探して街へと飛び出して行った。
 ウィルは再び取り残され、自分の非力さに唇をかんだ。
 そこへ、伝令用の鳥が窓の外に飛んできた。
 窓を開け、鳥の足にくくりつけられた羊皮紙を開くと、ウィル宛のものだった。
 ジェイクからだ。
 
 「入り江での船の一件は聞いた。俺たちも都へ向かっているところだ。無事に逃げられているのかどうかわからないが、これが届いていたら、ディーウィトゥムで落ち合おう」

 と書かれていた。
 ディーウィトゥムと言えば、ここからそう遠くない。
 ジェイク達がこちらへ向かってきてくれている。
 早ければ明日の午後には落ち合えるかもしれない。
 エレナを助け出すこともできるだろう。
 
 「チャドが酷い怪我を負ってる。俺とマーカス、エリアルは大丈夫だ。ジェフとエレナが今行方不明だが明日の午後、ディーウィトゥムの教会で待ってる」

 ウィルは羊皮紙の裏に倉庫にあった古いペンで返事を書き、鳥をすぐにジェイクに送り返した。
 みんな無事であってくれ――。
 今のウィルにできることはそれだけだった。

 日が沈む頃、ジェフが戻ってきた。
 「エレナは――」
 ウィルが立ち上がった。
 「見つけられなかった――」
 こみ上げる怒りと焦燥感を抑え、ウィルはジェイクからの申し出を伝えた。
 「あんたにも来てもらう」
 「・・・わかった」
 ジェフはうなずいた。
 その夜、近くの貴族の館から荷馬車を盗み出し、一行はディーウィトゥムへ向かった。

 次の日の午後には、ウィルがジェイクに指定した教会にたどりついた。
 そこには、夜を徹して駆けつけてくれたのであろうジェイク達がすでに待っていた。かなりの人数が集まっており、他の盗賊団の面々もいた。
 「ウィル!!」
 ウィルの姿を見て、ジェイクが声を上げた。
 「ジェイク、恩に着る」
 そう言うなり、ウィルは振り返ってジェフを殴りつけた。
 「エレナに何を言った!?」
 「・・・エレナは」
 殴り飛ばされたジェフが立ち上がりながら言った。
 「エレナではない。セレスティアという名の王女だ」
 「何を――」
 まさか、本当に――。
 「ウィル、お前はエレナの背中を見ただろう?傷一つなかったのを見て驚いたんだろう?」
 ウィルは言葉に詰まった。
 「俺も王族の人間だ」
 そういうとジェフは自分の腕をナイフで切りつけて見せた。
 傷は見るみるうちにふさがってしまった。
 それを見ていた盗賊たちは目を疑った。
 「お前達は、エレナに襲われて全員が負けたんだろう?一人の娘に。おかしいと思わないか?」
 集まっていた他の盗賊団を見て、ジェフが言った。
 「それはすべて、エレナが神から授かった恩寵のおかげだ。優れた頭脳、身体能力、驚異的な自然治癒力――」
 「エレナはこれからどうなるんだ?」
 ウィルはいてもたってもいられず尋ねた。
 「王位を継ぎ、この国を治めることはないだろう。彼女は全てを海へ還すと予言されている」
 「どういう意味だ?」
 「・・・この国を終わらせるという意味だ。エレナは、あいつを最も愛している者の手で殺されなければならない」
 ウィルは目の前が真っ暗になるのを感じた。
 「何だ、それ――」
 ジェフは息をついて話し始めた。

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