自由の船 2

2015.02.09 (Mon)
 次の日の深夜、白い帆が掲げられた。
 大人が二十人、子どもが八人。
 完成したばかりの大きな船に乗り込んだ。
 エレナやウィル、ジェフは、入り江の岬で、船の出航を見送った。
 船は順調に滑り出し、入り江を出て行った。
 孤児院を出た後、ある者は建築を学び、ある者は航海術を学び、ある者は船大工に弟子入りして、やがてこの入り江に集まった。
 どれほどの思いが込められた船か。
 自由への希望を乗せた船は、帆に風を受け、ゆっくりと進んでいった。
 ウィルが隣を見ると、エレナが目頭を押さえていた。
 そのときだった。

 「放てーーっ!!」

 高台から大声がした。
 何事かと思っていると、高台から一斉に火の点いた矢が放たれた。
 船はちょうど高台の正面に差し掛かったところで、帆に甲板に、もろに矢を受けた。
 船上が騒然としているのが聞こえてきた。
 「そんな――何が・・・!?」
 岸に残った全員が衝撃に身をすくめている間にも、火はどんどん燃え広がり、やがて――。
 
 ドンッ!!!

 凄まじい衝撃と共に船が爆発した。
 爆発物など積んでいないはずなのに、なぜ――。
 荷物にまぎれて、爆薬が仕込まれていたのだ。
 「密告者がいる――」
 ジェフが周りを見渡した。
 「誰だ!!」
 「言うわけないだろう!!」
 「お前じゃないのか!?」
 岬に残った仲間たちも衝撃を受け、騒然とした。
 「今はそれより生存者を探そう」
 ジェフは外套と靴を脱ぎ、海へ飛び込んだ。
 エレナもそれに続こうとしていたが、ウィルはエレナの手首をつかんで引き止めた。
 「この暗い海に飛び込むのは危険すぎる!!」
 「だからって放っておけないわ!」
 一刻を争う事態だ。
 沈み行く船は炎に包まれ、その赤々とした光がエレナの瞳に反射していた。
 「わかった。俺は陸路の逃げ道を確保しておく――」
 その言葉を聞くが早いか、エレナはすぐさま凍えるような海に飛び込んで行った。
 「馬車を引け!生存者が逃げられるように!!」
 ウィルは叫んで振り向いたが、次の瞬間、凄まじい力で鳩尾に拳を食らった。
 「っ!?」
 そして首筋に手刀を入れられ、気を失った。

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