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自由の船 1

2015.01.06 (Tue)
 次の日、ウィルのもとに、今度は珍しくエレナから伝令が届いた。
 アルフェンドラの一座が再びベルスにやってきているらしく、エレナもしばらく彼らと滞在するとのことだった。

 「いつも急にいなくなって心配かけてるみたいだから先に連絡しておくわ」

 と書かれていた。
 おそらくジェフも同行したのだろう。
 ウィルは羊皮紙の端切れをぐっと握り締めてため息をついた。
 ジェフが来てからというもの、エレナは明るくなった。
 別にもとが根暗だったわけではないが、ウィルの目に映るエレナは明らかに変わっていた。
 それに、今までこんな風にウィルのことを気に掛ける様子も見られなかったのに、まるで彼に対して罪悪感でも感じているようだった。
 昨夜、ジェイクにあの宣言をしたばかりだというのに、もう本当にエレナが遠くへ行ってしまうような、そんな気がした。
 こんなときアーヴィンなら何と言っただろう。
 本気で落ち込んだウィルは、自嘲気味に笑い声を漏らした。

 一月ほどして、エレナは都から帰ってきた。
 しかし、一緒だったのはジェフだけではなかった。
 赤毛の年齢不詳に見える男が二人と一緒に入り江にやってきた。
 「こちら、チャド」
 と、エレナが紹介した。
 「チャドは大陸の出身なの。彼も乗せていってあげて」
 お願い、と、エレナは言った。
 「もちろんだ。だが、ちょいと手伝ってもらうぜ」
 アダムがチャドの肩に手を置いた。
 「ああ!もちろんだよ!ありがとう!!」
 こうしてチャドが入り江の船の仲間入りをした。
 「お前も乗る気か?」
 ジェフがエレナに尋ねた。
 「いいえ。私はここで、まだやることがあるわ」
 「そうか・・・」
 ジェフが妙に安心したように見えたのはウィルの気のせいだろうか。
 しかし安心したのはジェフだけではない。
 ウィルも同じことだった。

 それから十日後、いよいよ出航の準備が整った。
 大陸へ渡ることを希望した孤児院の子供たちもエレナが連れてきた。
 「すごーい!!」
 「かっこいい!!」
 大はしゃぎの子どもたちの相手をするエレナを見て、ウィルも笑みがこぼれた。
 極秘のうちに出港する為、月がなくなる新月の晩と決められていた。
 その二日後が、新月だった。
 二日間、食料の調達など、最終的な準備を済ませ、そのときを待つことにした。
 「ジュリア、こちら、チャド。私たちの友人よ」
 エレナがジュリアという孤児院の聖職者にチャドを紹介した。
 彼女も孤児院の出身で、子どもたちの面倒を見ていた。
 大陸に渡った後も子どもたちの支援をするため、乗船が決まっていた。
 「こんにちは。初めまして」
 ジュリアが微笑んで挨拶したが、チャドはその場に立ち尽くしたまま、固まっていた。
 そして、何を言うかと思いきや、
 「けっ結婚しよう!!」
 突然プロポーズした。
 チャドはジュリアに文字通り一目惚れしたのだ。
 そのあと、チャドはジュリアを口説き続けた。
 やがては、驚ききっていたジュリアも笑顔になり、チャドとの結婚を承諾した。
 周りの人間はもっと驚いていた。
 こんなにあっという間に結婚にこぎつけた人間を初めて見た――。
 ウィルも「何でどうやったらこういうことになるんだ」と内心頭を抱えていた。
 新月の前夜は、別れとチャドとジュリアの婚約の宴となり、入り江は静かながらも幸せな空気に満ちみちていた。
 
 この後、その場にいた全員に悲劇が降りかかろうとも知らずに――。

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