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焦り 2

2014.12.31 (Wed)
 「おい、女相手に手え出そうってのか?」
 ウィルも反射的に剣に手をかけた。
 ウィルの記憶が正しければ、エレナは、ジェフは王族の血を引いていると言っていた。
 賞金首になって約十数年、放浪しながら生き永らえる為には相当の剣の腕が必要になる。
 そんな男と、いくらなんでもエレナに剣を交えさせたくなかった。
 「ウィルあんた、私と打ち合って一度でも勝ったことがあるの?」
 エレナは壁に立てかけられていた剣に手を伸ばした。
 しばらくジェフとエレナは互いを睨み合っていたが、やがてエレナが剣を放り出した。
 「バッカじゃないの!?回復した本気のあんたと私が打ち合って、私が勝てるわけないでしょう!?」
 「じゃあ、いてもいいんだな?」
 今度はジェフが勝ち誇ったように言った。
 「勝手にすれば?そのかわり水汲みとか巻き割りとか色々こき使うんだから!」
 エレナがふいっとそっぽを向いて叫んだ。
 反応に困ったときに出るエレナの癖だ。
 しかも頬がほんの少し赤く染まっているのをウィルは見逃さなかった。
 「あんた、ここにいてエレナをどうしようっていうんだ?」
 「どうもしない。話があるだけだ」
 話くらい、なぜこの三週間の間にしなかったのか――。
 「ならさっさと済ませて――」
 「無駄よ、ウィル」
 腰掛に座り込みながら、エレナが言った。
 「この人は言の葉の一族。口で勝とうたって無理よ」
 エレナに口で勝てる人間がいるのだろうか――。
 ジェフも同じことを思っていたことなど、ウィルには知る由もなかった。

 エレナの小屋にジェフが居候することを、家主であるエレナが承知してしまった今、ウィルにできることは何もなかった。
 「エレナに手え出したら承知しねえからな」
 と悔し紛れに釘を刺すことくらいで。
 自分が情けなくなりながらもウィルは帰途に着いた。
 この三週間にあの二人に何があったのか、ウィルには知ることができない。
 ただ、エレナが自分には決して見せない瞳をジェフに向けていたことは確かだ。
 そして、ジェフの意思の裏に何があるのか――。
 ウィルは考えるだけでも嫌になった。
 しかし、ウィルは十五年という歳月に思いをめぐらせた。
 仮に何らかの事情があってエレナが姿を消したとする。
 その姿を、何の手がかりもなく捜し歩くことが、自分にできるだろうかと。
 ジェフという男は、伝令石の技術が輸入される前から、幼子であったエレナをずっと捜してきたのだ。
 もうとっくに成人して、顔の面影も残っていないだろう彼女を。
 エレナを。
 どうやって捜し出したというのか。
 認めたくないが、二人が再び出会う為に、何かの大きな力があるとしか思えなかった。
 運命や神など信じていないウィルにすら、そう思わせるほどの偶然。
 自分に同じことができるだろうか。
 ウィルは再び自問した。
 そして、頭を振ってその疑問を振り払った。
 自分は自分だ。
 エレナの為になら命を懸けると、もう決めたではないか。
 仮に十五年放浪してその姿を見出すことができずとも、エレナを想う心だけは誰にも負ける気がしなかった。

 
 
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