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重なる不幸

2014.12.25 (Thu)
 それから一年間ほど、エレナは単身の盗賊として、義賊として働き続けていた。
 ウィルはエレナが無事かどうか、時々訪ねていくことしかできなかった。
 エレナは自分がいつどこでどの馬車を襲うつもりなのか決して明かそうとしなかった。
 それでも、ウィルを安心させる出来事もあった。
 何年も前から薬の調合を独学で学んでいたエレナは、、ドルアレスの街にも薬を売りに来るようになった。
 彼女の薬は抜群に効くと皆が言い、エレナが売りに来るなり飛ぶように売れていた。
 そして、盗賊団を抜けてもエレナは彼らの仲間であった。
 仲間の中で負傷者が出たと聞けば、いつでもそこへ駆けつけた。
 それまでのところ、エレナの薬で助かった者も何人もいた。
 しかし、その日エレナが駆けつけたサディアスという男は、もはや手のつけようがないほどの重傷を負っていた。
 
 胸から腹まで大きく袈裟懸けに斬られており、おびただしい血が流れていた。
 サディアスがもう助からないということは、ウィルの目にも明らかだった。
 それでも、エレナは懸命に彼の看護をした。
 「サディアス」
 「・・・エレナ・・・か・・・?」
 浅い息をして、呻き声の混じるような声色でサディアスは目を開けた。
 「そうよ、気をしっかり持って」
 エレナは薬と縫合の準備をしながら返事をした。
 「まずは、これを飲んで」
 エレナは掌くらいの大きさの瓶を渡した。
 「痛みが軽減されるわ」
 「ああ・・・すま・・ねえ・・・」
 しかしサディアスは瓶を受け取ったものの、口をつけようとしなかった。
 「サディアス、飲んで。頑張って」
 「エレナ・・・」
 サディアスは弱々しい声で呼びかけた。
 「何?」
 「俺は・・・お前に惚れてたんだぜ・・・」
 「なっ・・・サディアス?」
 「今でも・・・お前がこうして目の前にいるのが・・・夢なんじゃねえかって・・・。お前って本当・・・、天使みたいだよな・・・」
 サディアスの手から瓶が落ち、中身がこぼれだした。
 「サディアス」
 ウィルが瓶を拾い上げ、サディアスの手を強く握った。
 このままサディアスは死んでしまうのかもしれない。
 それでも、ウィルも自分にできることは何かしたかった。
 「そのあとは元気になってから言え。俺の前でエレナを口説こうなんざいい度胸じゃねえか」
 「はは・・・そうだ・・・な・・・」
 「サディアス」
 だんだん弱くなるサディアスの声に、ウィルは必死で呼びかけた。
 「サディアス!!聞け!!」
 「エレナ・・・ありがとよ・・・」
 それが、サディアスの最期の言葉だった。

 サディアスを送った後、エレナが茫然として座り込んでいた。
 何もできなかった。
 そんな罪悪感に駆られているのだろう。
 「エレナ」
 ウィルはその隣に腰を下ろした。
 「大丈夫か」
 「ええ・・・」
 「来てくれて、ありがとな」
 「何もできなかったわ・・・」
 「お前がいてくれたこと自体、あいつにとっては最高の見舞いだっただろうよ」
 もし自分の今際の際に惚れた女がそばにいてくれたら、それほど幸せなことはないだろうと、ウィルは思った。
 自分たちは盗賊などといういつ死んでもおかしくないような仕事をしているのだ。
 「・・・私も、明日久しぶりの仕事よ」
 「一人でか?」
 「ええ」
 「・・・気をつけろよ」
 ウィルはため息混じりにそう言うことしかできなかった。

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