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エレナの決意

2014.12.20 (Sat)
 「単身の盗賊!?」
 ディーウィトゥムの一件以来、エレナは盗賊団の会合に出席することもなかったが、それからしばらくしてのエレナの近況を聞いて、ウィルは度肝を抜かした。
 エレナの話では、一人単身、他の盗賊団の本拠地へ入り込み、農村は襲わないことを誓わせたらしい。
 そしてその連中が奪った金品を取り戻し、街へ返したとのことだった。
 挙句に単身の盗賊として復帰するらしい。
 「お前、自分が何やってるかわかって――」
 「わかってるわよ」
 ウィルの言葉を遮って言った。
 「やってることならうちの一味と変わらない。何だって一人で」
 「目的ができたのよ」
 「目的・・・?」
 「オプタリエの外れに、小さな孤児院を見つけたの。そこの子供たちは、飢えと貧しさに苦しんでる。だから・・・」
 「だから、獲物をそこへ落そうってか?正気か?」
 「正気よ」
 エレナは真っ直ぐにウィルを見た。
 「それに、もうこれ以上仲間を失いたくない。一人でやれば、気も楽だわ」
 「俺たちが足手まといだってのか?」
 「そうかもね」
 エレナはふいっとそっぽを向いた。
 瞬間、ウィルはダンッとエレナを壁に押し付けていた。
 「お前のことは、俺が守ってやる」
 「あんた、何度も聞くけど私と打ち合って勝ったことが一度でもあった?」
 エレナは冷ややかな目で言った。
 「それでも!惚れた女くらい守らせろ」
 「そこら中の女に手出してる男がよく言うわ」
 ウィルがもはや女遊びをほとんどやめたことはエレナも知っていた。
 それでも、ウィルはそんな言葉にも動じなかった。
 「だから一人でそんな危険な真似するのはよせ」
 「大きなお世話」
 エレナはウィルの手を振り払うと、彼を振り返った。
 「もう決めたことよ。私はこれから単身の盗賊として生きていくわ」
 「だがお前はどうあってもうちの仲間だ。忘れるな」
 エレナはそれ以上何も言わなかった。

 彼女の決意は固く、ウィルはこれ以上言っても無駄だと判断し、一旦家に帰った。
 それでも、エレナが一人で街道に張り込み、そこを通る王族の荷馬車を襲うなどと、考えただけで眩暈がした。
 もしまた御者が王族だったらどうするつもりなのか。
 先日は辛くも逃れられたようだが、次もそうそううまくいくとは限らない。
 「なあアー・・・」
 アーヴィン、と呼びかけようとして、彼が死んだことをウィルはもう何度目かも知らず気付かされた。
 ウィルに初めて剣の稽古をつけてくれたのはアーヴィンだった。
 大切な仲間を喪って、辛いことはウィルも同じだった。
 ただエレナは、その悲しみが人一倍強く、また過去を彷彿とさせるのだろう。
 ウィは不意にフリーギダの一件を思い出した。
 獣に食いちぎられた父と母。
 自分と同じように家族全員を殺されたも同然のルーカスの慟哭。
 同じような道を歩んできたウィルにとっても、エレナの気持ちはわからぬではなかった。

 それでも――。
 やはり、たった一人で盗賊と同義の真似をするのはやめてほしかった。
 ただでさえ一人でオプタリエの近くに住み、常に危険と隣り合わせにいるのに、これ以上命を危険にさらすような真似をしなくても。
 しかしどう言ってもエレナが決めたことを覆すことはできないだろうと、ウィルはぼんやりと知っていた。

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