盗賊の運命(さだめ) 3

2014.12.17 (Wed)
 そして――。
 盗賊どもとつるんでいた貴族の館に入り、金品を片っ端から奪い取った。
 衛兵と斬り合いにもなった。
 「アーヴィン!!」
 エレナの悲鳴のような声に、ウィルは一瞬振り向いたが、目の前の衛兵と鍔迫り合いになっており、アーヴィンの救出に向かうことができない。
 その間にエレナは敵に囲まれたアーヴィンを助けるため、階段の手すりを飛び越えて彼の背後に立った。
 激しい乱闘に燭台が倒れ、館は炎に包まれつつあった。
 エレナは向かい合っていた数人の衛兵を斬り殺した。
 「エレナ――」
 「逃げるのよアーヴィン!!」
 火はどんどん燃え広がっていた。
 そのエレナの目に飛び込んできたのは、槍で腹を貫かれたジャックの姿だった。
 「ジャック!!」
 エレナがジャックのもとへ走って行くのが見えた。
 ウィルはようやく相手を斬り捨てると、エレナとジャックの元へと急いだ。
 エレナはその場にいた衛兵を片っ端から斬って捨てていた。
 「ジャック・・・」
 エレナがジャックのそばに膝をつくと、ジャックは弱々しい声で言った。
 「逃げ・・・ろ・・・」
 「そんな、置いていけないわ」
 「俺は・・・もう駄目だ・・・」
 「ジャック!!」
 「みんなのことは、頼んだぜ・・・」
 大量の血を吐いたかと思うと、ジャックの目から生気が失せた。
 「ジャック・・・ジャック・・・!!」
 「エレナ、行くぞ」
 ウィルはエレナを立たせた。
 「ジャックは・・・!」
 「仕方ない。このままじゃ全員火にのまれる。行くぞ!」
 涙をこらえるエレナの腕を掴んで、ウィルは馬車へと飛び込んだ。

 それからの盗賊たちとの争いは熾烈を極めた。
 生易しい衛兵とは違う。
 いくつもの生死のやり取りをしてきた本物の人殺し集団だ。
 数においてはウィルたちの方が圧倒的に不利だった。
 しかし、エレナの強さには誰にも敵わなかった。
 仲間を失ったエレナの悲しみは深く、怒りは凄まじかった。
 夜が明ける頃には、盗賊たちはせん滅されていた。

 日が昇ってくると、エレナは血のついた剣を布で拭きあげた。
 その頬にはいく筋もの涙が伝っていた。
 「大丈夫か・・・」
 ウィルが隣に腰を下ろした。
 「・・・私は、この一団を抜けるわ」
 「・・・・・・」
 「もう、仲間を失うことに耐えられない・・・」
 ジャックだけではなく、アーヴィンも結局は盗賊の手にかかって命を落とした。
 ウィルは今回の件をエレナに知らせたことを悔いたが、エレナの手によって救われた仲間の方が多いことも確かだった。
 「お前の好きにしろよ」
 「また元の生活に戻るわ」
 「ときどき訪ねて行く」
 「何も出ないわよ」
 「まだお前を口説き落としていない」
 「またバカばっかり言って・・・」
 顔を両手で覆って涙をこらえるエレナを、ウィルはただ抱きしめ続けた。

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