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サルトゥスの悲劇 5

2013.04.06 (Sat)
 「エレナ・・・」
 チャドが彼を責めてはいけないと言ったが、エレナは聞かなかった。
 「ジェフは、村で一番強い人だって、お母様が言ってた。なのにどうして、隠れたりしたの?」
 ジェフには答えることができなかった。
 「ジェフは君を守る為に隠れたんだよ」
 「どうして私を守ったの!?どうして私一人だけ・・・!!どうしてお母様とお父様も守ってくれなかったの!?」
 エレナはジェフをどんどん叩いた。
 「エレナ・・・」
 チャドがエレナを抱き寄せ、やめさせたが、エレナはまた泣き始めた。
 「ジェフのばか・・・!!」
 ジェフは残って戦わなかったことを心から悔やんだが、何も言うことができなかった。

 その後、他にも数人の生き残りの村人と行き会い、哀しみを分け合った。
 ジェフはいてもたってもいられず、ウェトゥムへ行くことを決心した。
 「ウェトゥムへ行くって、どうして!?」
 チャドが言った。
 「真実を知りたい。本当にウェトゥムの人間が謀反を謀ったのかどうか」
 「どうやってそんなこと調べるんだ?」
 「前も言っただろう。常人が王族の人間を殺すなどほとんど無理に近い。何があったのか知りたい」
 「ジェフ・・・」
 「エレナを頼めるか?」
 「もちろんだよ」
 「頼んだ。すぐ戻る」

 ジェフはすぐにウェトゥムに入った。
 そして、伯爵家のある丘へやって来た。
 外からこっそり中を覗き込むと、確かに弔いの儀の準備をしているところだった。
 「何をしている」
 門番に見つかった。
 ジェフは一瞬で門番を這い蹲らせた。
 「何があった」
 「お前は誰だ?」
 ジェフは答えずに剣を抜いた。
 門番の男の喉元にひやりと剣の切先が当たった。
 「死んだのは誰だ?何があった?言え!」
 門番の男はジェフの怒声に驚き、慌てて話し始めた。
 「亡くなったのはこの家の当主だ。村人に殺された」
 「村人がどうやって王族の人間を殺したんだ?」
 「当主が散歩しているところを、十人くらいの村人たちが一斉に斧で切りかかったらしい。当主は生まれつき足が悪かった。だが頭を割られて、それは見るも無残な姿だった――」
 貧相な村人たちの家と、伯爵家の異様なまでの豪奢なつくり。
 いつかのサルトゥスのように、王族への不満が爆発したのだろう。
 ――本当だったか・・・。
 ジェフは門番の男を気絶させ、ウェトゥムを後にした。
 しかし、サルトゥスの方角から炎が赤々と燃えるのを見て、何事かと駆け出した。

 ジェフがサルトゥスに戻ったのは真夜中近くだった。
 ほぼ全ての家屋に炎が放たれ、焼け崩れていた。
 死体の焦げた臭いが辺りに立ち込めていた。
 「チャド!エレナ!!」
 ジェフは叫びながら村中を回った。
 この数時間に何があった。
 ジェフは不安と絶望に駆られながら、二人の姿を探して回った。
 「チャド!!」
 ジェフはようやく、通りの隅に倒れていたチャドを見つけた。
 チャドは生きていた。
 「チャド」
 チャドを抱き起こすと、ゆっくりと目を開けた。
 「ジェフ・・・」
 「どうした、何があった?エレナはどこだ?」
 「盗賊だ・・・。みんな盗まれて、最後は火をつけていった・・・」
 「エレナは?」
 「攫われてしまったんだ・・・俺、何もできなくて・・・」
 ジェフは頭を固いもので打たれたような衝撃を覚えた。
 あの伯爵家は、盗賊と組んでいたのだ。
 ジェフは理解した。
 時たまウェトゥムの村を襲わせては、その甘い汁を吸っていたのだ。
 村人たちはそれに気付き、伯爵を殺したのだ。
 そして今夜、伯爵家は崩壊したサルトゥスの情報を流した――。
 ジェフは怒りに震える拳を押さえた。
 「ジェフ・・・ごめん・・・俺、頼まれてたのに・・・」
 「もういい、わかった。休んでくれ」
 盗賊の本拠地はそう遠くないはずだ。
 ジェフは盗賊たちの馬車の後を追い、夜闇へと消えていった。

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