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ジェフリー・レヴィナス

2014.12.10 (Wed)
 ウィルがエレナと出会ってから一年近く経った頃、
 ジャックという仲間がお尋ね者になってしまった――。
 あらゆる街のあちこちにジャックの手配書が掲示され、外出もままならない状態になってしまった。
 そこで、ウィルとアーヴィン、エレナの三人が都の騎士団の本拠地に侵入し、彼の手配書を抹消することになった。
 ただ、騎士団には盗賊団のカシラ、ジェイクの幼馴染がおり、中から手引きをしてくれたおかげで、拍子抜けするほどあっさりと騎士団の本部へと入ることができた。
 そして、執法官長の机に、ジャックの死亡届を書き置いた。
 用事はそれだけだったはずだった。
 しかし、エレナが帰ろうとしていた二人の足を止めた。
 「待って」
 「何だよ」
 振り向くと、エレナは一枚の手配書を凝視していた。
 「この人の記録も抹消して」
 「誰だこいつ・・・?」
 見れば、三十代半ばほどだろうか、ジェフリー・レヴィナスという一人の男の人相書きがそこにあった。
 「いいから。早く」
 アーヴィンが騎士団の本部に長く居座るのは危険だと判断して、この危険な旅に同行したエレナの希望通り、その男の記録を抹消した。
 しかし、ウィルはエレナが今にも泣きそうな顔をしているのを見逃さなかった。

 ウィルとアーヴィンはドルアレスに戻り、エレナはオプタリエのそばの小屋に無事帰り着いた。
 その次の日、ウィルはエレナを訪ねた。
 ドアをノックして、顔を出したエレナの第一声はいつものものだった。
 「また来たの」
 「またそれか」
 もはやこのやり取りが規則のように決まりきっていた。
 ウィルは勝手に小屋に入り込むと、どかっと長椅子に腰をおろし、単刀直入に聞いた。
 「あのジェフってやつ。何なんだ?」
 「別に。昔の知り合いよ」
 エレナはふっと目を逸らして短く答えた。
 「昔の知り合いのためにあそこまでするか?」
 注意深くエレナの様子を見ながら、ウィルはさらに言った。
 「・・・あの人よ」
 エレナは糸車の前に置かれた椅子の背をぎゅっと握って呟いた。
 「何が」
 「私の村が襲われた時、あの人は戦おうとしなかった。私を守るためと言って逃げ出したのよ。そして生き延びた――」
 そういえば、いつだったかサルトゥスの悲劇の中でエレナが生き延びることができた理由を聞いたことがあった。
 「それはお前が子供だったからだろ?」
 その言葉に、エレナは激しく反論した。
 「そんなの言い訳にならない!!だったら私もあそこで――」
 「おい、それ以上言ったら――」
 ウィルは無意識に立ち上がり、その手首をつかんでエレナの言葉を遮った。
 あそこで死んでいたほうがよかった――。
 彼女にそんな言葉を口にさせたくなかった。
 一人の女をこれほど愛しく思う喜びを知るきっかけをくれたのはエレナだ。
 「何してるの。放して」
 目の前にやってきたウィルの目をギッと睨んでエレナは言った。
 その瞳に宿っていたのは、怒りのように見える悲しみだった。
 「・・・どうしてお前は人を愛さない?」
 エレナは何も言わない。
 ただ強く握られた手首の痛み耐えているようだった。
 「どうして必要以上に人と馴れ合おうとしない?」
 「もう耐えられないのよ、置いていかれるのが」
 エレナは無理やりつかまれた手首を振りほどき、外へと出て行ってしまった。
 ウィルはため息をつき、その後姿を見送った。
 
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