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サルトゥスの悲劇 4

2013.04.06 (Sat)
 「ルーク!!」
 エレナが悲鳴を上げた。ジェフは反射的に飛び出そうとしたエレナを押さえつけた。
 「ルーク!!ルーク!!」
 「エレナ!逃げるのよ」
 アリスが叫び、エレナの元へやって来た。
 「お父様とお母様はここでお医者の勤めを果たすわ」
 「いや!私も一緒にいる!!」
 「エレナ、聞き分けてちょうだい」
 エレナは幼心に何か危機感を感じているようだった。
 青い瞳からボロボロと涙が零れ落ちる。
 「お母様はいつだってあなたと一緒よ。ジェフがあなたを守ってくれるわ」
 「おい、俺は逃げないぞ」
 ジェフは口を挟んだが、アリスが凄い剣幕で詰め寄った。
 「あなたはこの村で誰よりも強い!!エレナはなんとしても守らなければならないわ!!それができるのはあなただけよ!!」
 「いや!!私ジェフ嫌い!!」
 「エレナ!!言うことをお聞き!!」
 アリスはエレナの額に自分の額をこつんと合わせた。
 「いいこと?お母様は世界で一番あなたを愛してるわ。お勤めが終わったら迎えに行くから、今はジェフといなさい。いいわね?」
 「お母様・・・!!」
 「ジェフ、行って!!」
 そのとき、アリスの視界の隅に飛び込んできたのは、アールを狙って引き絞られている弓矢を構えた男の姿だった。
 ――やめて・・・!!
 アリスは考えるまもなく飛び出した。
 「アリス!!行くな!!」
 「お母様!!」
 
 弓矢に貫かれた母の姿が、エレナの網膜に焼きついた。

 「お母様ーーーーーーっ!!!!」
 「くそっ、エレナ!!」
 倒れた母に駆け寄ろうとするエレナを抱き上げ、ジェフは走り出した。
 
 「アリス!!」
 アールは妻の倒れた姿を見て叫んだ。
 「アリス!!」
 しかし、彼もまた、王族の手に掛かって命を落とした。

 ジェフは森に入ると手近の木に上り始めた。
 「エレナ、暴れるな!」
 「お母様!!お母様!!」
 人の視界に入らない高さまで来ると、幹に腰を掛け、エレナを抱き寄せた。
 かなりの高さがあるがエレナは王家の人間だ。
 飛び降りても簡単に着地してしまうだろう。
 「放して!!お母様が!!お父様が!!」
 「エレナ・・・頼む、静かにしてくれ」
 ジェフは自分の不甲斐なさを心底呪った。
 目の前で友人を二人も失った。
 アールが生きているかどうかは、今のジェフには分からなかった。
 そのとき、森にまで追っ手がやって来た。
 ジェフは騒ぎ立てるエレナの口を押さえつけた。
 「――――――っ!!――――――っ!!」
 村が静かになるまで、二人はそこに身を潜め続ける他なかった。
 エレナはジェフにしがみついて、ひたすら泣きじゃくっていた。

 やがて日が傾き、村の騒乱が収まったかのように見えた。
 ジェフはエレナを連れて木を降り、村へ戻った。
 その目に飛び込んできたのは、村人たちの夥しい死体だった。
 その手には、みな一様に熊手や斧が握られていた。
 反撃しようとしたのだろう。
 しかし、それは王族に「殺してください」と言うようなものだった。
 「お父様!!」
 通りに倒れていたアールに、エレナが駆け寄った。
 しかし、彼女の父が再び目を開くことはなかった。
 「お父様・・・お母様・・・」
 エレナはボロボロと涙をこぼし、ただただ泣き続けた。
 ジェフも落胆し、がっくりと膝をついた。
 また、何もできなかった・・・。
 そのとき、物影から声がした。
 「エレナ・・・?ジェフ・・・?」
 「チャド!!」
 エレナが駆け寄り、チャドに抱きついた。
 「エレナ・・・!無事だったんだね・・・!!」
 チャドも泣きながら、何度もエレナの頭を撫でた。
 「お父様と・・・お母様が・・・!!ルークも・・・!!」
 チャドはぎゅっとエレナを抱き締めた。
 「でも・・・、君とジェフは無事だった・・・。今はそれを喜ぼう」
 その言葉に、ふとエレナが呟いた。
 「・・・して・・・」
 「え?」
 「どうして、ジェフは、みんなを助けてくれなかったの?」
 エレナは泣きじゃくりながらジェフを睨んだ。

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