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サルトゥスの悲劇 3

2013.03.20 (Wed)
 ジェフは再びしばらくサルトゥスに滞在し、エレナの古代語の習得ぶりを見て、本気で驚いていた。
 「この島の神ファリガーナが、人間の為島を開き、人間が住めるよう島を整えた。島の長老はこれを・・・」
 ジェフが作って行った本を、エレナは小さな声で訳しながら読んで聞かせた。
 しかし、会話はない。
 なぜここまで嫌われるのか、ジェフはわからなかった。
 あの時振り落としたのが相当痛かったのだろうか。それともやはりこの父親譲りの風貌のせいだろうか。
 どっちにしても、エレナは古代語の学習の時間以外、ジェフを避けて過ごした。
 
 そんなある日だった。
 森の方から、男が一人、息せき切って現れた。
 「た、助けてくれぇーーーっ!!」
 男は大通りまで逃げてくると、ぜえぜえと息をついた。
 「どうしたんだ?」
 「どこから来たんだ?」
 村人たちが男に問い掛けた。
 見ると、腕を怪我して血を流している。
 「アール!アール!」
 往診に来ていたアールを、村人が呼び止めた。
 「どうしたんだ?」
 「わからない。急に現れて・・・」
 「お、俺・・・俺たち・・・」
 男はすがるような目で村人たちを見回した。
 「ウェトゥムから来た。俺たち・・・俺たち殺っちまったんだ。王族の人間を・・・!!もう、我慢できなくて・・・!!あいつら、盗賊連中と・・・!!」
 「追っ手が来るぞ!!」
 男の話を遮り、誰かが叫んだ。
 一気にパニックになった。
 人々は逃げ惑い、男は一人取り残されたが、アールが手を貸した。
 「さあ、こっちだ。施療院は村の奥だ。気付かれにくい場所にある」
 アールは男に肩を貸し、歩き出した。
 すると、森の奥から、騒がしさと同時に多くの人間が駆け込んできた。
 「助けてくれ!!」
 「助けてくれ!!」
 村は完全にパニック状態に陥った。
 そして、馬の蹄の音が聞こえてきたかと思うと――。
 ヒュッ!
 矢が飛んできて、アールが抱えていた男が倒れかけた。
 「大丈夫だ、肩を掠めただけだ。頑張れ、もう少しだ」
 「だめだ、あんた、逃げてくれ。毒が、塗ってあるんだ――」
 その言葉を最期に、男は口から泡を吹いて倒れこんだ。
 ――アリス・・・エレナ・・・!!
 アールは男を寝かせ、施療院に走りこんだ。
 「アリス!!」
 「なんだか村が騒がしいわ。どうしたの?」
 畑仕事をしていたアリスが顔を上げた。
 「ウェトゥムの人間が謀反を起こして、ここへ逃げてきてる。追っ手もだ」
 「そんな――!!エレナ!!」
 「エレナはどこだ!?」
 「上で遊んでるはずよ」
 「逃げるんだ。一刻も早く!!」
 「ジェフ!!」
 アリスは悲鳴のような声でジェフを呼んだ。
 施療院の厩で手伝いをしていたジェフが顔を出した。
 「ジェフ!!」
 「どうした?」
 「ウェトゥムの人たちが謀反を起こして、ここまで逃げてきてるそうよ――」
 エレナ――。
 ジェフは反射的に飛び出した。
 「アリス、エレナと一緒に西の森へ入れ!!」
 そのとき、騒ぎを聞きつけたエレナが降りてきた。
 「どうしたの?」
 「エレナ!逃げるのよ!!」
 しかし――。
 「アール!!」
 「助けてくれ!!」
 ルーカスが、怪我をしたウェトゥムの人間を連れてきた。
 アールは通りに飛び出し、けが人に手を貸した。
 「サルトゥスの者たちよ!!」
 馬上から王族の人間が叫んだ。
 「ウェトゥムの人間に手を貸すことなかれ!!さもなくば反逆者と同罪とみなし、そなたらを攻撃せねばならん!!」
 「王族よ!!」
 アールが叫び返した。
 「サルトゥスの人間に罪はない!またウェトゥムの人間全てに罪があるわけでもなかろう!!」
 「アール!よせ!!」
 走ってきた村人が叫んだ。
 「私は医者だ!!医術の前に罪人も善人も差別があってはならない!!」
 「ならばそなたをも殺めることになるぞ!!医者であろうとなかろうと、謀反は死罪となる!!」
 「やってみろ!!」
 ルーカスが、憎しみを込めた目で叫び、短刀を手に飛び出していった。
 「ルーク、よせ!!」
 ギリッと弓がしなると、矢が放たれた。
 その矢はルーカスの心臓を打ち抜いた。

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