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Ivy-2

2013.02.17 (Sun)
  「じゃあ、これを借りに来たの?」
 落ちてきた本を元にもどしながら、アールが尋ねた。
 「はい。今度、私がお世話になる施療院で、王族の受け入れを始めることになるそうで・・・」
 「へえ、うちも、王族対応の要請が来たって、さっき先生が言ってたよ」
 「じゃあ、医師の方なんですか?」
 「ああ、そうだよ。四号館の西のずっと奥の・・・」
 アールがそう言うと、アリスは嬉しそうな悲鳴を上げた。
 「え、何?」
 「私、今度そちらでお世話になることになってます!アリシアといいます」
 「へえ、偶然だね」
 アールは梯子に腰掛けたまま、ランプに照らされたアリスを見下ろした。
 「みんなには、アリスって呼ばれてます」
 「じゃあ、君が十六歳で薬師試験に合格したっていう?」
 すると、アリスは急にムカッとしたような顔になった。
 「・・・十八です」
 「十八!?」
 アールは驚いて声を上げたが、それがさらにアリスの頬を膨らませてしまったことに気が付いた。
 「あー・・・、失礼・・・」
 「昔から童顔で、幼く見られるんです」
 アリスはため息をついて続けた。
 「私が院でお世話になった先生も、みんな私が十八だってご存知ないみたいですね」
 「でも、薬師試験には合格してるんだね?」
 アールは話題を逸らそうと頑張った。
 「はい。半年前に合格しました」
 半年前、ということは、やっぱり十七歳で合格したんじゃないだろうかとアールは勘ぐったが、もう年齢の話に触れるのはよそう、と思った。
 「薬師の資格を持ってるんなら、うちに来てもらえたら僕も楽になるよ」
 アールはそう笑って、最後の一冊を棚へ納めると、梯子を降りた。
 「ありがとうございました」
 アリスが丁寧に礼を述べたので、アールはにこっとしてどういたしましてと返した。
 それから、思い出したように尋ねた。
 「ところで君、失礼を承知で聞くけど、貴族の子?」
 「え、あ、違います」
 アリスは一瞬目を逸らしたが、すぐにそう答えた。
 「そう。よかった」
 アールが安心したようにくすくすと笑ったので、アリスは貴族出身だと何かまずいのだろうかと不安になった。
 「あの、どうしてですか?」
 「いや、この間、貴族の出の女の子がうちにきてね。どうも、結婚相手を探していたみたいなんだ」
 アールはランプと梯子を手に、書棚を移動しながら話した。
ランプに照らされるアリスの金色の髪がサラサラと美しい。
 「ほら、医者になるようなのはやっぱり貴族が多いし、そういう子も少なからずいるんだろうね。僕に、あなたは貴族の方ですかと聞いてきたもんだから、違うよと馬鹿正直に答えたら、その子はえらくがっかりしたようで・・・」
 やれやれと苦笑しながら、アールは師に言いつけられた本を引っ張り出していく。
 「もっと身分の高い連中がいっぱいいる、宮廷薬師のところへ行ってしまったんだよ」
 「そうですか・・・」
 「女の子が、みんなそんな子たちだと思いこむのも良くないんだろうけどね」
 アリスはそうですね、と曖昧に笑って答えた。



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