盗賊仲間

2014.12.06 (Sat)
 その三日後、ウィルはエレナと待ち合わせをして、所属する盗賊団の本拠地へ彼女を案内した。
 薄暗い倉庫の中にエレナを案内すると、樽に腰掛けた若い男が度肝を抜かれたような声を上げた。
 「なっ、ウィル、新しい仲間って女かよ!?」
 「そうだぜ。剣の腕は確かだ。なんか文句あるか?ジェイク」
 ジェイクと呼ばれた男は樽から飛び降り、エレナをしげしげと見やった。
 「いい女だな」
 「俺の売約済み」
 「何言ってんの」
 エレナに一蹴されて、ウィルは肩をすくめた。
 「あんたウィルを振ったのか!?」
 「振るも何もないわよ」
 するとジェイクは今世紀最大の珍事とでも思ったのか、腹が捩れるほど笑った。
 「そうか、ウィルもやっと失恋を経験したか」
 「失恋てしてねえって!口説き落とすまで時間がかかった方が落とし甲斐があるだろ」
 エレナはただ呆れてため息をつくばかりだった。
 「悪い、遅くなったな。俺はジェイク。ここのカシラを務めてる」
 ジェイクはひとしきり笑うと、エレナに向き直って手を差し伸べた。
 「エレナよ。よろしく」
 エレナもその手を取って挨拶した。
 「剣はいつから?」
 「え?」
 ジェイクの問いに、エレナはすぐに答えられなかった。
 意味がわからなかったのだ。
 「剣の稽古はいつからしてる?」
 「したことないわ」
 「何?」
 ジェイクが急に真顔になった。
 「実際に剣を持ったのはウィルと打ち合ったときが初めてで、稽古はしたことないわ」
 「お前それで負けたのか!?」
 ジェイクは呆れたようにウィルを振り向いた。
 「まさか女相手に本気出せるわけないだろ」
 「じゃあもう一度やってみる?」
 「いや、俺が相手になろう」
 ジェイクがさも楽しそうにいった。
 「俺はこいつと違って手加減なんかしねえから。怪我するようなことがあれば俺が責任取ってあんたを嫁さんにもらうよ」
 「何勝手なこと言ってんだよ!俺だってもう一度やれば負ける気はしねえぞ!!」

 その後ウィルとジェイクがエレナと打ち合いをしたが、どちらもエレナの圧勝に終わったのは書き記すまでもない。

 その日はエレナと他の面々の顔合わせのほかに、次に襲う貴族の館に目星をつける会議が行われた。
 「クレメンティアに入るぎりぎり手前か。移動に時間がかかるな」
 「集団で行くと目立つ。バラバラに行こう」
 「お前はウィルと一緒に現地に入れ」
 ジェイクがエレナに指示を出した。
 「心もとないだろうがウィルは方向感覚だけは確かだ」
 「何だよその言い草・・・」
 二回もエレナに負けて意気消沈しているのか、ウィルは大した覇気もなく言い返す言葉も少なかった。
 
 その後解散してみると、辺りはすっかり夜の帳が下りていた。
 「送っていく」
 ウィルがエレナの横に立った。
 「いいわよ、気を遣わなくて」
 「夕暮れ時の女の一人歩きは危ない」
 「ウィルが一番危ない」
 すれ違いざま、アーヴィンがからかい半分に囁いて行った。
 「アーヴィン!!」
 ウィルは怒声を上げたが、すぐにエレナに向き直った。
 「お送りしますよ、お嬢さん」

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