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言の葉の一族 1

2013.03.11 (Mon)
 ジェフはルーカスに連れられて、村の教会へやって来た。
 そこには、村の大半の人間がいるようだった。
 皆一様に重々しい表情で座り込んでいる。
 ジェフは殺気のようなものすら感じた。
 その中にはアールとアリス夫妻もいた。
 「反乱を起こしたい」
 教壇の前まで来ると、ルーカスはフードを脱ぎ捨て、もう一度言った。
 「あんたの知識と力が必要だ」
 「ルーク」
 「黙ってろアリス」
 アリスが声を上げたが、ルーカスが圧し留めた。
 「もうみんな、国のやり方には我慢の限界を超えてる。誰かが動かなきゃ何も変わらない」
 「・・・反乱って・・・何だか分かってるのか?」
 ジェフは考え込むようにゆっくりと言った。
 「当たり前だろう、馬鹿にしてんのか」
 「じゃあ、ここにいる全員が死ぬことになることもか?」
 「俺たちは死なない。死んでも次の村の希望になる」
 「ならない」
 ジェフはため息を吐いた。
 「農民が反乱を起こせば、国は今以上に農村部に辛く当たるだろう」
 「ならこのまま我慢し続けろってのか?」
 「どこに仕掛けるつもりだ?王族か?貴族か?奴らを襲うのか?それでは夜盗のすることと変わらない」
 それに――。
 と、ジェフは付け加えた。
 「力の差がありすぎる。あんたたちは、“普通の”人間だ。だが王族ともなれば、普通の人間とはまったく違う。身体のつくり自体からすでに違っている」
 「どう違うんだ?」
 チャドが言った。
 ジェフが言いよどんでいると、ルーカスが言った。
 「だから何だって言うんだ?」
 「剣の稽古もしたことがない一般の人間が、十人束になってかかって行っても、訓練を積んだ王族の人間には傷一つ付けられないということだ。悪いことは言わない。連中に掛かっていこうなんて、思わないでくれ」 
 「お前は連中をかばうのか?」
 「そうじゃない。ただ、・・・お前たちは連中の前ではあまりに弱すぎる。無駄な犠牲を出して何の意味がある」
 「だから、俺たちにはあんたが必要なんだ」
 レオが言った。
 「連中を知ってるあんたが」
 ジェフはため息を吐いた。
 どうしたらいい。
 「いいか、俺は連中をかばうつもりはない。だが王家が滅ぶことはこの国の滅亡を意味する」
 「俺たちでは国としてやっていけないってことか。少なくとも今の王政よりマシな政治ができるぜ!」
 教会の中からどやっと声があがった。
 「そうじゃない」
 ジェフは声を鎮めながら言った。
 「この国の伝承だ。・・・王家と共に王国は栄え、王家と共に王国は没する。・・・古文書の一文だ」
 「古文書・・・?」
 「連中に手出しをして、万が一国王を殺したとなれば、世継ぎがまだ生まれていない今、この国は滅亡する。だからやめてくれ」
 「何の話をしてるんだ?」
 メルロスが不思議そうな声を上げた。
 昼間の出来事もあった。ちょうどいい機会かもしれない。
 ジェフは一息ついてから話し始めた。
 「この国の伝承と、俺が賞金首になった話をしよう。俺を売れば、一生遊んで暮らせる」
 教会の中が、しん・・・と静まり返った。
 「それと反乱の話がどう――」
 ルーカスが言いかけた言葉を遮って、ジェフは話を続けた。
 「まず、この国の伝承だ。ファリガーナが現在の王家に王権を与えた話だ」
 「あんたそんな話信じてるのか?」
 メルロスが言った。
 「信じようと信じなかろうと、どっちでも良いが、後で話すことを裏付けるにはこの話を信じるしかなさそうだ。・・・二千年以上前、この島は神々の領域にあった。この島の神、ファリガーナが、人間に島を開くよう、最高神に直訴した。初めは、住みついた人間も少なく、島は平和だった。しかし、神の領域の島が開かれたと聞き、外国の者たちも多くこの島へやって来た。そして長老の一族と外国との間で争いが起きた。島の長老はその惨劇を嘆き、どうか島を、民を救い給えと神に祈り続けた。そしてある満月の晩、ついにファリガーナがこの地に降り立った。神は言った。“お前たち一族をこの地の王としよう。私欲や業に走ることがなければ、二度とこの島で争いは起こるまい”と。それが現在の王家と王族だ」
 「その話が本当なら、この国とっくに滅んでるんじゃないのか?」
 「俺もそう思う。だがまだ話には続きがある。王家はファリガーナに誓って、この国の民を守ると言った。すると、ファリガーナは王家に恩寵を与えた。恐るべき身体能力と、不老長寿の力だ。連中が百を超えても若いツラしてるのは知ってるだろう?決して不死ではないが、常人と比べたらものすごい長寿だ。その力で、民を守るようにと、ファリガーナは言った。そしてその後、大きな津波が起こった。外国から攻め入ってきていた船は皆沈んだが、人間は助かった。すべてはファリガーナの力だった。外国の連中は侵攻を止め、この島を崇めるようになった。そして、大平歴が始まった」
 「えっ、大平歴って、この国が建国されてからなの?」
 アリスが驚きの声を上げた。
 「そうだ。そしてその後約二千年以上、争いらしい争いは起こっていない」
 「だが、そんなものおとぎ話だろう?信じられない」
 ルーカスが言った。
 「おとぎ話で一つの王朝が二千年も続くと思うか?ルーカス。大陸では一つの王朝が続いても三、四百年だ。この島の伝説・・・ファリガーナの伝説は、侵攻しようとした外国での方が詳しく語られてる」
 「うん、俺も聞いたことあるよ、今の話」
 チャドが言った。
 「俺、大陸の出身なんだ。向こうでは、ここは神様に守られた至福の国だって言われてる。それで俺も子どもの頃ここへ来たんだ」
 現実はこんなだけどね、とチャドは苦笑した。
 「そうか、大陸の出身だったのか。・・・俺は元は、王族の人間だ」
 どよめきが広がった。
 「何だと――っ!!」
 「だが何百年も前に、逆賊としての嫌疑をかけられ、滅亡させられた紋章官一族の末裔だ。俺の親父・・・カルロスもそうだ」
 「カルロスが・・・!?」
 「俺は王族の中でも叡智に優れたウェルバという一族の末裔だ。ウェルバの一族は古くは『言の葉の一族』と呼ばれた。そしてそれが仇となり、俺の祖先は逆賊の嫌疑をかけられることになった。
 古くは、二つの家門が執政として働いていた。書と歴史を司る紋章官一族――俺の一族だ――と、護民官側のコルニクス一族。この二つの家門が執政官として働いていた。紋章官一族には、代々受け継がれる古文書というものがある。それには王家の心が業や私欲に傾くと、各地で災厄が起きる。地震、日照り、飢饉――そして、やがては国の滅亡を迎える。そういったものが起きる前に、王家に警鐘を鳴らすのが紋章官一族の勤めだった。
 やがて王家は、紋章官一族により深い信頼を置くようになった。コルニクス一族にとっては面白くない話だ。その頃にはすべての実権を掌握したかったんだろう。・・・そんな折、飢饉が起きた。紋章官一族は何度も国王に諫言した。王族の心はいまや業に傾いていると。しかし年若き国王は、何の手立ても打とうとしなかった。・・・あの時も何百という人が死んだ。しかも悪いことに、それらを予言した古文書は、今では使われなくなった古代語で書かれている。かつては共通語だったが、次第に廃れ、扱えるのは紋章官一族と聖堂の一部のものだけになった。そこでコルニクスは時を得た。
 災厄が起きるのは、紋章官一族が王権を狙い、古文書を使って呪いをかけ、それを王家の責任として王家を滅亡へと導こうとしているとな」

 
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