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魔女の戦略

2014.06.14 (Sat)
 ゴルドアの吟遊詩人の一座、アルフェンドラと合流すべく、ジェフとエレナは都に近い旅籠に部屋を取った。
 懐に余裕があるわけではないので、二人で一部屋だ。
 エレナの小屋にいるときも二人で住んでいるのだから今更どうということはない。
 旅籠の主人も旅の夫婦だと思ったらしく、寝台が一つしかない部屋を案内してくれた。
 というかその部屋しか空きがなかった。
 小屋でもそうしているように、自分が長椅子で寝るから、エレナは寝台を使えとジェフが言うと、
 「これだけ広い寝台なら二人で寝ても大丈夫でしょ」
 エレナはどうしてこうも危機感が薄いのだろう。
 自分が男だということを忘れているんじゃないだろうかとジェフが不安になったっとき、エレナがふっと表情を変えて窓辺へ駆け寄った。
 「騎士団の連中が手入れしてるわ」
 「何?」
 「うちの誰かかもしれないわ」
 「都へ行って記録を抹消したんじゃないのか?」
 「仕事が多くて困るのよ。・・・きっとこの部屋へも連中は来るわ。もしかしたら私の顔も割れてるかもしれないのよね」
 窓から離れると、エレナは衝撃的な発言をしながら、さらに衝撃的な行動に出た。
 「おい、何してる――」
 ジェフの外套を脱がせると、シャツの紐を中途半端に解き、今まさに脱ごうとしている状況に仕立て上げた。
 「あんたもあんまり連中と顔合わせたくないでしょ。黙ってて」
 それからエレナはジェフのブーツの紐も解き、なぜか彼の髪も乱して、自分の外套も脱ぎ捨てた。
 それから後ろを向いて、しゅるしゅると自分のシャツの紐をも解き始めたではないか。
 「連中が来たら、まずあんたが出て。私もすぐ行くわ」
 後ろを向いたままだからここからは見えないが、エレナはブーツを脱ぎ、ひどくしどけない姿をしているに違いない。
 ほどなくして、部屋をノックする音がした。
  「行って」
 エレナに言われて、ジェフはドアを少しだけ開けた。
 そこには二人の若い騎士が立っていた。
 「何だ」
 「王国護衛騎士団の者だ。お尋ね者を探している。中を改めさせてもらうぞ」
 「ここは俺と――」
 誰と言ったらいい?妹?妹と同じ部屋?
 「だぁれ?」
 ひょいとエレナが姿を現した。
 ジェフの腕を自分の腕と絡めて。
 が、その姿にぎょっとしたのはジェフだけではないようで、若い騎士も慌ててエレナから目をそらした。
 エレナは裸足で、胸元を大きく肌蹴させ、普段は絶対に見せないような妖艶な笑みを浮かべていた。
 その姿はジェフが想像していたよりしどけないどころの騒ぎでなく、今まさに誰かに乱されたような風体だった。
 ジェフもエレナによって服を乱されていたことを思い出し、彼女の戦略に気づいた。
 「おまっ――」
 「誰かお探し?」
 エレナはジェフに構わず、ひどく楽しそうに騎士に尋ねた。
 「そ、その――」
 「ここには私たちしかいないわ。若い夫婦の旅を詮索するのが騎士団のお役目なら、中を見てみる?」
 夫婦!?
 ジェフが二の句を次げずにいると、エレナは部屋のドアを大きく開けた。
 そして彼らの目に飛び込んで気きたのは、散らばった二人の外套と、いつの間にか乱された寝台が一つに寝椅子があるだけだった。
 「こ、これは失礼しました。野蛮な輩が多いので、道中、お気をつけて――」
 若い騎士の二人は慌てて次の部屋へと姿を消した。
 エレナはクスクス笑いながら部屋のドアを閉めた。
 「お前――」
 「何?この姿で男と女がいるのに長話ができる人間てそういないわよ」
 エレナはまさに夫婦の営みを中断された奥方を演じて見せたのだ。
 しかももう身だしなみを整え始めていて、先ほど浮かべていた妖艶な笑みは欠片も残っていなかった。
 ジェフは心のどこかでがっかりしながらも、自分のブーツの紐を締め始めた。
 「お前いつもこんなことしてるのか?」
 「まさか。ウィルといるときに同じことが起こったって、間違ってもこの手段はとらないわ」
 「正解だな」
 ジェフは「俺ならいいのか」と若干複雑な気持ちになったが、エレナが誰にでも肌を見せているわけではないと知って安心もした。
 「ところで寝床の話だけど」
 エレナは長い髪をかき上げながら振り向いた。
 その仕草があまりに妖艶で、ジェフは急いで答えた。
 「やっぱり俺は寝椅子で寝る」
 「そう。別にいいのに。ウィルじゃないんだから」
 「俺が男だと忘れるな。ついでに男がどういうもんかも忘れるな」
 エレナは一瞬きょとんとしたが、やがて再びクスクス笑い始めた。
 「何がおかしい」
 「あんたの口からそんなこと聞こうとは思わなかったわ」
 「お前は男に対して危機感が薄すぎる」
 「だって、私にはあの子がいるもの」
 エレナが指差した先には、彼女の愛刀があった。
 「剣を持っていないときに襲われたら?」
 「そうね、急所を蹴り上げてでも逃げるから心配ないわ」
 エレナの身体能力ならできなくもないだろう。
 「それでも・・・、今の手は俺以外には絶対に使うな」
 「はいはい。でも私はあの森の界隈では“魔女”と呼ばれてるのよ?使える武器は何でも使うわ」
 武器――。
 エレナの最大の武器は普段は厳重に隠されているその色香なのかもしれないと、ジェフはぼんやりと思った。
 
 その後は、エレナの武器の真価を発揮することもなく無事にアルフェンドラに合流することができたが、あのしどけない姿のエレナがジェフの脳裏から消えることはなかった。




エレナさんいい度胸してます。
この時点でエレナはジェフへの思いを自覚してるはずなので、相手がジェフだからこそ使えた技(?)だとも言えます。
ジェフもうっすらエレナへの思いを自覚してるので、よく手を出さなかったものです。
というか本編ジェフは王女に手を出すなんてとんでもないとか思ってる人なので、万が一にもそんなことにはならないと思います。
王女だからじゃなくても、ちゃんと大事に思ってくれてます。
しかしウィルの扱いがひどい。
ごめんウィル。


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