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薬草畑の夫婦 4

2013.03.09 (Sat)
 「・・・それで、預かってくれていたのか」
 昔の話を終えると、ジェフが口を開いた。
 「これを持っていること自体、危険なことだった――。すまなかった」
 「私が彼にできることはそれしかなかったからな」
 アールは苦笑した。
 「他には何か言っていたか?」
 「ああ、あんたのことも話していた」
 アールはニヤリと笑った。
 「何だって?」
 ジェフは嫌な予感がしたが、一応尋ねた。
 「あんたがここへ来る頃には、もしかしたら息子はかなりの人間不信になっているかもしれないと言っていた。誰かに追われているかもしれないとも言っていたな。だが決して悪人ではないはずだから安心してくれと言われたよ」
 ――巨大な世話だ・・・。
 ジェフは心中でひそっと毒づいた。
 「それから、もし息子が私を信用せずに無礼な態度をとったとしても、大変申し訳ないが俺に免じて勘弁してやってくれってな」
 アールはおかしそうにケラケラと笑った。
 ジェフは「あの野郎・・・」とため息をついた。
 「それで、カルロスの言ったことが本当かどうか、つい試してみたくなったんだ」
 アールは笑うのをやめた。
 「あんたは、カルロスの言った通り、私を信用していないようだ。昨日の今日の知り合いでは無理もないかもしれないな。だが逆に、そんな男を家に招いてまで自分の妻に会わせた時点で、私はあんたの敵ではないとわかって欲しかった」
 「・・・すまないな」
 大げさに人間不信、というわけではないが、ジェフが容易に人を信用しないのは事実だった。
 「いや、私も試すような真似をして悪かった。ただ、カルロスの言葉はあまりにいつも正しかったんで、たまには外れないものかと思ってしまったんだ」
 もうカルロスを疑ったらいけないな、とアールは苦笑した。
 「だが、この村の人間は、少しお人好しすぎるんじゃないか?」
 ジェフは渋い顔をして尋ねた。
 「なぜ?」
 「昨日の、俺のこともそうだ。よそ者にこれほど甘いようじゃ、この先何があるか――」
 ジェフは村人を心配してそう思ったのだが、アールはさらに渋い顔をして答えた。
 「あんな反応をするのもあんたにだけだろう。こう言うとあんたは嫌がるかもしれないが、彼らがあんたを受け入れたのは、あんたがカルロスの息子だからだ。たしかに彼らは揉め事を嫌うが、誰彼構わずというわけではない。こんな時代だからな。・・・みんな口には出さないが、もう誰も国を信じてはいないだろう。いや、一人だけ堂々と言ってる奴もいるが・・・」
 ジェフは、それがルーカスのことだと分かった。
 「あいつも、悪いやつじゃないんだ、悪い奴じゃ・・・。ただちょっと・・・」
 アールが困ったようにブツブツ言うので、ジェフは苦笑した。
 「カルロスは、それに何が書いてあるのか決して言わなかったが、何にしろ、それに何が書いてあるのか、無理に知ろうとは思わない」
 アールはやがて、すっきりしたように顔を上げた。
 「ただ、もし医学のことが何か書いてあったら、是非教えて欲しい」
 「ああ、わかった」
 そう請合ってから、ジェフはふと尋ねた。
 「アリシアは、このことは――?」
 「いいや、知らないと思うよ。本当に誰にも話していないんだ。カルロスと話して以来、初めて口にした内容だ」
 彼女に隠し事をしたのはこれが初めてだ、とアールは苦笑し、ジェフは何だか余計に申し訳なくなった。
 「すまないな、本当に・・・」
 「いいんだよ」
 アールはくすくすと笑い、いつかカルロスが自分にそうしたように、うな垂れたジェフの肩をポンポンと叩いた。

 ジェフは小屋に戻ると、カルロスの遺していった書物を早速読み始めた。
 「・・・・・・」
 日記か?
 自分の日記を読めというほど親父は何か勘違いしているのだろうか。
 確かに子どもの頃は父親の存在というものに憧れていたが、今となっては同志としか思っていない。
 そもそも、なぜこれを自分に会ったあの日に渡さなかったのか。
 ジェフには分からない事だらけだった。
 しかし、カルロスがそこまで重要なものだと断言したのだったら、ただの日記ではないのだろう。
 ジェフは見覚えのある筆跡を再び目で追い始めた。

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