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The Beginning 6

2014.02.16 (Sun)
「クレスト?」
「西部から来た奴なんだが、あいつもかなりだ」
気まずくならないよう気を使って話しているジェフは、カルロスが驚いている様子に気付かなかった。
それがあのクレストなのか確証がない今、カルロスは弟の存在を明かすべきかどうか迷った。
下手にそのクレストという男に近づこうとして、ジェフの正体がばれてしまったり、弟探しの旅にでも出て、ジェフが王家の豪遊を根本から食い止めようとしているのを妨げてしまうようでは本末転倒だ。
「ただちょっと口うるさくてな。俺が今回無理に休暇を取るのもあいつに散々気をもまれた」
「お前を慕ってるんだろ」
「だといいんだがな。お前には長官という自覚が足りないとかってコルニクスにもよく言われるよ」
皮肉るように笑ったジェフに、カルロスは再び驚きの念を禁じ得なかった。
「コルニクスと関わりがあるのか」
「あるだろ。本部の長官なんてやってれば」
「・・・憎くないのか」
自分たちが、普通に家庭を持って暮らすこともできなくした張本人の一族。
何百年も前、コルニクス一族に陥れられ、現在の紋章官一族の境遇がある。
「憎いさ。憎くても、今は王家を何とかする方が優先だ。これじゃいつまでたってもあんたの仕事が終わらない」
ジェフは静かに言った。
「・・・俺にもいつか“終わる”時が来る。そのときは――」
「わかってる。俺が引き継ぐ」
「もしもの話だが、お前の正体ばれて、追われる身になった時は、ここに身を隠せ」
「ああ、そうさせてもらう。・・・ときに、ガルシアは?どうしてるか知ってるか?」
「わからない。あいつの子孫のこともある。ガルシア一族にも生き延びてもらわないとな」
ウェルバ一族ばかりが世話になって、ガルシア一族が滅んだなんてことになったら俺たちは死んでも死にきれないな、と、ジェフは真剣に言った。
「そのうちにまたオプタリエの外で行き会う予定だ。お前の近況も伝えておくよ」
「ああ。よろしく伝えてくれ」
そう言うと、ジェフは立ち上がった。
「もう行くのか?」
「ああ。実は休暇は今日が最終日だ。あんたを探すのは本当に骨が折れる仕事だった」
「一つ聞いてもいいか?」
「何だ」
「なぜ、俺に会いに来た?」
「・・・・・・」
ジェフは一つ考えてから、ため息をつくように言った。
「父親を探しちゃ悪いか?」
「いや悪かないが」
「さっきも言ったが、俺は自分の境遇をあんたのせいだとは思っていない。ただ、記憶できる歳になってから死ぬ前に一度くらい父親の顔を拝みたいと思っただけだ。あんたの動向も気になったしな」
またそのうち会おう、と、ジェフは外套をひっかけた。
「気をつけろよ。特にコルニクスには」
「わかってるよ」
外に出ると、日はすっかり沈んでいた。
こりゃ休暇延長だな、と、ジェフは独り言を言った。
「あんたも、災害目指してばかり動くんだ。気をつけろよ」
「ああ」
馬にまたがったジェフにカルロスは手を差し出した。
「また会おう」
「ああ」
その手を握り返し、一つうなずくと、ジェフは馬のわき腹を蹴り、闇夜の中へ消えて行った。

一人に戻ったカルロスは、我知らず涙がこぼれるのに気がついた。
生きていてくれた。
それだけで十分だった。
それから、額に当てていた手を外し、空に向かって息をついた。

――エリーナ、ジェフは逞しく育ったよ。

ジェフの元にいるクレストという男も、息子なのだろうか。
デーナは今どうしているのか・・・。
カルロスは白い吐息とともに小屋の中へと戻って行った。

数ヵ月後、サルトゥスの危機は去った。
サルトゥスを出る準備をしていると、アールという若い村の医者が、カルロスを引きとめるために息せき切ってやってきた。
それからが大変だった。
カルロスはアールを何とか説得して、納得させると、そうだ、と思いついた。
荷物の中から暗号を書いた日記を取り出し、アールに渡した。
「アール、これを、俺の息子に渡してやってくれないか」
「あんた結婚してたのか!?」
アールは見当違いな方向に驚いていたが、了承して引き受けてくれた。
「俺の息子はこの村に来る時には、もしかしたら誰かに追われる身になっているかもしれないが、悪い人間ではない。だがもしかしたら相当の人間不信になって、何か無礼を働くかもしれないが、俺に免じて許してやってくれ。・・・だがあいつはここに来る日が来るだろう。それまで、預かっていてほしい。もし他の誰かに奪われるようなことがあれば、燃やしてしまえ。それくらい、大切なものだ」
アールは事の重大さを受け止め、しっかりと頷いた。
「じゃあな。またいつか顔を出すよ」
カルロスはアールに笑いかけ、村を出て行ったが、サルトゥスの地をその足で踏むことは二度となかった。

カルロスはオソという村にやってきた。
ちょうど50歳になろうとしていた頃だった。
次の疫病はこの村で流行るはずだ。
しかし、カルロスがオソに足を踏み入れた時にはすでに疫病が発生していた。

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