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The Beginning 2

2014.02.09 (Sun)
カルロスは数日後、メモに書かれた通りにやって来た。
何となく、彼女のことが忘れられなかった。
昼日中は、あまりうろつかないようにしているが、夜になってうろついていて夜盗扱いされたのではたまったものではない。
しかし、いざ53番地にやってきたところでどうしたらいいかもわからない。
その日は何もすることなく帰って行った。

以来、カルロスの足は事あるごとに彼女の家に向かうようになっていた。
忘れられない。
必死に自分に助けを求めていた彼女の姿が。
ある日の夜半、53番地に差し掛かった時、背後から声がした。
「まだあなたの名前、聞いてなかったわ」
それと同時に、カルロスは反射的にエリーナの喉首をつかみ、塀に押し付けていた。
身を守るためについた癖だった。
エリーナは痛がるそぶりも見せず、ただ驚きに目を見開いていた。
「すまない」
カルロスは慌ててエリーナを解放した。
エリーナは軽く首元をさすったが、カルロスを責めはしなかった。
「ごめんなさい、驚かせたわね」
「いや、本当にすまない」
「あなたのこと、何て呼んだらいいの?」
「カルロスだ」
「カルロス・・・いい名前ね」
エリーナは自分の家の塀の隙間から中庭に忍び込み、カルロスを中へ誘った。
「この間は、ごめんなさい、変なことを言ってしまって・・・」
ベンチに座るよう促しながら、エリーナは再び詫びた。
「いや、家を飛び出したくなるときなど誰にでもある」
「優しいのね。それにしても、本当にここへ来てくれるなんて思わなかったわ」
カルロスは何も答えなかった。
忘れられなかったのだ。
エリーナのことが。
「あの・・・聞いてもいいかしら」
「何だ」
「あの羊皮紙に書かれていた文字・・・聖堂の文字よね?あなた、聖職者?」
「に見えるか?」
カルロスは苦笑した。
「紋章官一族のことなら知ってるわ。でも、あなたがもしその生き残りだとしても、私はあなたのことをどこかへ報せたりしない」
「なぜだ?」
「・・・あなたのこと、どうしてだかずっと忘れられなかった。初めて見たときから・・・」
そのあとは、言葉にならなかった。
カルロスが自分の唇で彼女のそれを塞いでいたからだ。
どれくらいそうしていただろう。
エリーナは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「俺も忘れられなかった・・・何故だかわからないが、気がつけばここへ何度も足を運んでいた」
「何度も?」
「何度もここへ来ていた。だがやっと今日会えた」
「エリーナ?」
カルロスがエリーナの頬に手を伸ばしかけると、館の窓から男の声がした。
「お父様だわ」
うんざりしたようにエリーナが言った。
カルロスは反射的に立ち上がり、物陰に身を隠した。
「カルロス、また会える?」
「ああ。また来る」
「私の部屋は二階の右端よ。ここへきたら小石を投げて」
窓からは再びエリーナを呼ぶ声がした。
「今行くわ、お父様」
エリーナは少し大きな声で返事をすると、カルロスを抱きしめた。
「また来て、必ず」

それからというもの、二人は何度もその庭で落ちあった。
平凡な、幸せな日々だった。
エリーナが家を出たいと言ったのは、継母からの執拗ないじめに耐えかねてのことだとも聞いた。
しかし、カルロスも自分の使命を忘れたわけではなかった。
「旅へ出る?」
エリーナが不安そうな声を出した。
「災害の予兆がある。民を避難させなければ」
カルロスもこのころには、自分が紋章官一族の末裔であることを打ち明けていた。
「私も連れて行って」
「だめだ。危険すぎる」
「お願い。もうここにはいたくないの――」
「そんな子供じみた理由で連れていけるほど甘い話じゃないんだ」
エリーナはショックを受けたような表情になった。
しかし、すぐに唇を噛みしめて静かに言った。
「・・・ここにいたくないのは事実よ。子供みたいってわかってる。でも、私だって少しでもあなたの役に立ちたい・・・。あなたのそばにいたい」
それだけ言うと、エリーナは小走りに家の中へと戻って行った。
その頬には涙が伝っていた。

カルロスはガルシアとともに災害の予兆が認められた場所へ赴き、民を地震から救った。
そして、彼は戻ってきた。
いつものようにエリーナを庭へ呼び出した。
エリーナは久しぶりに会ったカルロスが少しやつれているのに気がついた。
「エリーナ」
カルロスはエリーナの手をとって、真剣に言った。
「いつか、お前を迎えに来る。それまで待っててくれないか」
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本編はこちら
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