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父親の痕跡 3

2013.03.04 (Mon)
 日が沈むと、ジェフはチャドに連れられて、村外れの酒場へやって来た。
 中は蝋燭の温かい光が溢れ、笑い声が外まで聞こえてきた。
 「ねえ、その顔どうにかならないの?」
 歩きながら、チャドが渋い顔をしてジェフを見た。
 「は?」
 「その、何ていうかさ、何でそんな仏頂面してんのさ。あたりかまわず睨みつけて!」
 そう言われても。
 「いや・・・べつに仏頂面してるつもりもあたりかまわず睨んでるつもりもないんだが・・・」
 ジェフは困ったような顔をしてチャドを見たが、チャドはいつまた胸倉を掴まれるか知れたもんじゃない、とばかりに、ジェフから数歩離れて歩いていた。
 「まずその眉間のしわをどうにかしなよ」
 チャドは自分の額をぺぺんと叩いて忠告したが、ジェフはさらにしわを寄せるばかりだった。
 ジェフはうるさそうに自分の額を拳で擦りながら、何だって今日初めて会った男に自分の顔についてこうも文句を言われなければならないんだと内心情けなく思った。
 「どういう顔だろうと仕方ないだろう、仏頂面が俺の地顔なんだろ」
 「ふぅん、損な顔だね」
 チャドは不思議そうな顔でジェフを見上げ、かなり失礼なことをのたまいながら店のドアを開けた。
 カランカランとドアベルが鳴ると、中にいた村人たちは一斉にチャドを振り向き、どやっと杯を挙げた。
 「ようチャド!」
 「鶏の色はどうなったい!」
 「変わってないよ」
 チャドはブツブツ言いながらジェフを連れてカウンターへと向かった。
 「・・・鶏の色って何だ?」
 ジェフは怪訝な顔をして聞いたが、チャドは「なんでもないよ!」とごまかすように手を振り、店のカウンターへと進んでいった。
 「よう、一ヶ月ぶりだな」
 カウンターの中で、生え際と頭頂部の寂しくなった、この酒場の主人らしい男がチャドに声をかけた。
 「よう親父」
 「見ねえ顔だな、あんた」
 親父はジェフとチャドに酒を注ぎながら言った。
 「ああ。最近越して来た」
 ジェフリーは肩をすくめた。
 「越してきた?ここへか?わざわざ?」
 親父はカップを渡しながら驚いたように笑った。二人はそれを受け取り、代金を渡した。
 「こんな辺鄙な村へ越してくるなんざ、あんたもついてねえな」
 「彼はジェフリーだ。カルロスのせがれだよ」
 チャドがジェフを紹介すると、親父は手にしていたカップを落とした。
 「カルロスの!?」
 「ああ」
 ジェフは困ったように笑い、カップに口を付けた。
 中身は、極限まで薄めた葡萄酒、というより、水に申し訳程度の葡萄酒が入っているようなものだった。この農村部では仕方がないのだろう。
 「驚いたな。どっかで見たことのある顔だと思ったら。俺はパウルだ」
 パウルはカウンター越しに手を差し出し、ジェフはその手を握って返した。
 「パウル?ポールじゃなくてか?珍しいな。ジェフだ。よろしく」
 「俺の親父が大陸の出身なんだ。まあパウルでもポールでも何とでも呼べよ。ああっと、ハゲ親父はごめんだぜ」
 パウルの言葉にジェフが笑うと、テーブルの方から声がした。
 「おいチャド!こっち来て飲めよ!」
 チャドは「わかった」と示すように杯を挙げ、ジェフを振り向いた。
 「行こう。あいつらは、猟師と家具職人の連中だ」
 二人はパウルにまた後でと声をかけ、テーブルに向かった。
 「よう。どっかで会った顔だな」
 二人がテーブルに着くと、金髪の男がジェフリーに言った。
 「誰かな?ずいぶん前に見た覚えがあるんだが」
 「彼はカルロスの息子だ」
 チャドが再び紹介すると、そのテーブルはしんと静まり返った。
 「カルロスの・・・?」
 「ていうかあいつ子どもがいたのか!?しかもこんなにでかい!?」
 ジェフは苦笑を浮かべて首をかしげた。
 「ルーカスだ」
 先程の金髪の男が、ジェフに杯を挙げた。
 「ジェフリーだ」
 ジェフリーも杯を挙げ、それに応えた。
 「レオだ」
 「チャーリー」
 「フランクだ」
 そのテーブルにいた他の男たちもそれに倣い、一人ずつジェフに杯を挙げた。
 「カルロスは今、どうしてるんだ?」
 レオが嬉しそうに聞いた。
 ジェフは、一瞬目を伏せてから、
 「死んだ」
 とだけ言った。
 そのテーブルにいた全員が俯いた。
 「そんな・・・」
 「少し前、オソで疫病が流行っただろう?あそこにいたんだ」
 ジェフが杯をテーブルに置いて言った。
 「オソ・・・あそこはもう、完全に封鎖されたと聞いた」
 「ああ」
 「あんたはそのとき、どこにいたんだ?一緒じゃなかったのか?」
 ルーカスが言った。
 ジェフは、目を伏せたまま答えた。
 「・・・騎士団にいた」
 ジェフがそう言った瞬間、ルーカスは突然酒の入っていたマグを床に叩きつけた。そしてそのまま席を蹴って立ち上がり、ジェフの胸倉を掴んだ。
 「団の人間だったのか貴様!!」
 酒場中がしんとしてジェフを見た。
 「ルーク!」
 チャドが叫んだ。
 「お前もお前だチャド!なぜこんな奴を連れてきた!!」
 「ジェフは悪い奴じゃない!!」
 「フリーギダがどうなったか聞いただろう!こいつらは俺たちから金と食糧を巻き上げて、用がなくなったら皆殺しか!?」
 ジェフは驚いて眉根を寄せた。
 「皆殺って何だ?どういうことだ?」

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