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プロローグ 3

2013.02.28 (Thu)
 「ウェルバというのは、古い言葉で『言葉』そのものを表す。その昔、ウェルバ一族は“言の葉の一族”と呼ばれたものだ」
 祖父が説明した。
 遠雷がごろごろと響き、窓を揺らした。
 「その古代語は今はもう使われなくなった。王家の儀式のときくらいだ。文官と紋章官を担ってきたウェルバ一族が代々後世へと伝えてきた言語だった。しかし、我らは謀られたのだ」
 祖父は一呼吸置いた。
 「しかし、今はファリガーナの伝説の話だ」
 「ファリ――あのおとぎ話の?王様が神様から王権を授かったって?」
 「ジェフ」
 祖父はじっとジェフを見つめた。
 「これから私が話すことは、現在分かっていることの事実だ。疑わんでくれるか?」
 「ああ・・・ごめん」
 「話は約二千年前に遡る。我らこの国の民の始祖が、この島にやって来た。しかしこの島は元々神の領域であった。この島の守り神、ファリガーナが、この島に人間が住めるよう、最高神に直訴した。ファリガーナの訴えは聞き入れられ、島は開かれた。しかし、人間たちの間に争いが起こった。ファリガーナは深く悲しみ、この島を見棄てたかのように思われた。しかし、始祖の長老が、このままでは島の人間が死に絶えてしまう、どうか我らを救い給えと祈りに祈った。ファリガーナは願いを聞き入れ、条件と共に我らを救った」
 「条件て?」
 「長老の一族が王家となり、私欲や業に走ることなく一心に民を思えば、二度とこの島に争いは起こらぬであろうというものだ。我らウェルバ一族の男がそこに居合わせた。男は王家の信頼を勝ち得て、王家を助けるべく王族の仲間入りをし、紋章官に任命された。男は神とのやり取りで見聞きしたことを全て書き綴り、後世に――我らに伝えた。また、戦で多くの血を流したコルニクス一族も護民官側の執政家となり、王家の剣となった。他にもいくつかの一族が王族となり、現在に至る」
 ジェフはふーっと息をついた。
 これが事実だというのか・・・。 
 「そして、ここからは伝説ではなく事実だ」
 
 全ての話を聞き終えたジェフは、我知らず膝が震えるのを感じていた。
 「すべては古文書に記されている」
 祖父はゆっくりと立ち上がると、暖炉の奥の隙間から古びた本を取り出した。
 ジェフの心臓がどくんと高鳴った。
 「まさか、これが・・・?」
 「さあ、アライアス」
 祖父はジェフに古文書を手渡した。
 「何年かかってもい。これを読み解くのはお前自身だ。その目でこの国の歴史を追い、この国を守る為何ができるか、一生その責めを負うのだ」
 「これからは身を守る為、剣術も必要になります」
 ガルシアが進み出た。
 「私がしばらくここに滞在させていただくことになりました。その間に稽古を付けさせていただきます」
 「剣――」
 子供同士のチャンバラしかしたことのないジェフにとって、まさか自分が本当に剣術を習う日がこようとは思わなかった。
 「いいか、ウェルバの名を名乗れば命はないと思え。今でも紋章官一族は逆賊として殲滅の命が出ている。古文書と古代語の扱いにも気をつけるんだぞ」
 ジェフはずっしりと重い古文書を開いてみた。
 しかしそこには、見たこともないような文字がびっしりと並んでいた。
 「・・・読めない。何語だ?これ」
 「今話しただろう、古代語だ」
 「どうしたら――」
 「私が生きている間は手伝ってもいい。しかし、それを読み解くのはお前自身だ」
 ジェフは再び古文書に目を落とした。
 これを読みきれるのは一体いつになるのだろう。
 見知らぬ文字の海は、本物の深い深海を見つめているようでもあった。


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