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プロローグ 2

2013.02.28 (Thu)
 状況が飲み込めないジェフは、そのまま立ち尽くしていた。
 「これがラクテウスの息子、アライアスだ」
 そんな孫を尻目に、祖父は男に孫を紹介した。
 しかも、祖父は今、何と言った?
 ――おれの名前はジェフリーだ。父親の名前はカルロスじゃないのか?
 まずい。じいさんもそんな年になったのだろうか。
 ジェフは祖父を心配している間も、火掻き棒を持ったまま突っ立っていた。
 「ウェルバ一族にお仕えしております、ガルシアと申します」
 男はもう一度ジェフに頭を下げた。
 「ジェフ、いい加減それを下ろせ」
 ジェフにはちんぷんかんぷんだった。ただ、祖父に言われたとおり、火掻き棒を壁に立てかけた。
 「どこまで話した?」
 祖父はガルシアに向き直った。
 「フリーギダの作物が・・・」
 二人はひとしきり、ジェフを放って話の続きを続けた。
 ジェフも突っ立ったまま聞いていたが、祖父がこんなに深刻な顔をしながら話すのも、そもそも知らない人間を家に招くなどありえないことだし、何の話をしているのかさえさっぱりわからなかった。
 ただ、自分が空気のように放置されていることだけはわかった。
 「・・・さて」
 話が済んだのか、祖父が改めてジェフを見た。
 「お前も今日で七つになる」
 そうだ、今日はおれの誕生日だ。
 ジェフは突然思い出した。
 「ガルシアもここへ来てくれたし、お前に話したいことがある」
 そうしてくれ。
 ジェフは先程から、自分が知らない家に転がり込んだのではないかと心配になり始めたところであった。
 「こいつは、誰なんだ?」
 ジェフは尋ねた。
 「今本人が言ったとおり、ガルシアだ。代々我がウェルバ一族に仕えているガルシア一族の末裔だ」
 「ウェルバ・・・?」
 もっとわかりやすく話してくれ!
 ジェフは幼心に憤りというものを感じていた。
 「お前には、今日から、我が一族として生きるか、違う道を生きるか選択してもらうことになる」
 ・・・じいさん、おれ、まだ七つなんだけど・・・これからの生き方って・・・。
 突然の通告に、ジェフは愕然とした。
 というより、今までお気楽に見えていたじいさんは一体なんだったんだ。
 今真剣な顔で話しているこのじいさんは誰なんだ。
 「ジェフ、お前にはまだ話していなかったことが山ほどある」
 そうだろう。
 今日のこの様子では、山ほどでは済まなそうだ。
 「先にこれだけ言っておく。まだ七つの子供にこんな話をするのは酷だろうと思うている。しかし、七つになるその日、一族の仲間入りをするかどうかを決めるのが、代々の慣わしだ。お前がその慣わしすら拒むようであれば、今まで聞いたことは全て忘れろ。話はここで終いだ」
 「じいさんも七つで?父さんも?」
 「そうだ。皆、七つでこの選択をしてきた」
 「・・・なら、聞くよ」
 ジェフはまだちんぷんかんぷんのまま、心もとなげに頷いた。
 ガルシアは気配を消すように、ひっそりと佇んでいた。
 「よし。では始めるぞ。・・・我らには、我らの一族にはある秘密がある。我らはウェルバ一族、数百年前に滅んだとされる紋章官一族の末裔だ」
 「もんしょうかん・・・?」
 「我らは元は王族なのだ。この国の王族には、神から与えられた恩寵を背負っている。不老長寿と常人には敵わぬ身体能力。知っているか。私の齢を」
 そういえば、聞いたことがない。
 「知らない・・・」
 「二百三十だ」
 「二百三十!?」
 ジェフは度肝を抜かれた。
 普通の人間の寿命は七十歳から八十歳だと思っていた。
 しかも、祖父はそんな年を取っている風に見えない。
 ただ髪は白くなっており、それだけが、辛うじて老人であることを示していた。
 「それと、お前の頭脳だ」
 「頭脳?」
 「七つで読み書きが完璧にできる子など王族のほかにいない。特に我らはウェルバ一族じゃ。特別に明晰な頭脳を代々受け継いでいる」
 そうなんだ・・・。
 ジェフは、ルドアに何回読み書きを教えても、ルドアが全く吸収しないことを心底不思議に思っていた。
 「しかし、それらの恩寵と共に、果たすべく使命もある。お前はこの先、ウェルバ一族として生きるか、あるいは常人と同じ人生を歩むか、今ここで決めねばならん」
 「どういう意味・・・?」
 「ジェフ、決めるのだ。我が一族の秘密を背負い、ウェルバとして生きるか、常人として生きるか」
 「・・・常人として生きると言ったら、おれはどうなるの?」
 「どうにもならん。私が生きている限りこの家で過ごし、その後はお前の自由だ。何もお前を縛るものはない。しかし、父とは二度と会えない」
 「父さんは生きてるの!?」
 ジェフは驚いて大きな声を上げた。
 「三月ほど前まで、カルロスと一緒におりました」
 ガルシアが微笑んだ。
 「ウェルバとして生きると言ったら・・・?」
 ジェフは恐々と尋ねた。
 「その命に代えて、この国を守りぬく使命がある」
 「父さんも、ウェルバとして・・・?生きる為におれを置いていったの?」
 「・・・そうだ」
 ジェフは幼心に理解した。
 何となく分かっていた。自分が他の子供たちとどこか違うことが。
 知りたい。
 自分は何者なのか。
 「わかった」
 ジェフは慎重に言った。
 「おれ・・・秘密を聞きたい」
 「ならば、いいんだな?この国の責めを負うことになっても」
 「うん」
 まだ七つの自分にそんなことができるわけがないと思っていた。
 それでも、ジェフは父親に会いたかった。
 ルドアがいつも父親に肩車されて帰っていくのが、たまらなくうらやましかった。
 どんなに読み書きができて、多少難しい会話ができても、子供らしさのない自分を不思議に思っていた。
 父親に会いたい、そう思う心だけが、ジェフに残った子供らしさだった。
 「おれがウェルバとして生きることを選べば、父さんに会えるんでしょ?」
 祖父とガルシアは顔を見合わせた。
 「それは約束できない」
 祖父は残念そうに言った。
 「というのも、カルロスもこの責めを負い、流浪の身になっておる今、あいつと行き会うのは至難の業だ。可能性がないとは言わんが・・・」
 「なら、おれも父さんと同じ道を行くよ」
 ジェフはしっかりと頷いて見せた。
 「・・・よろしい」
 しばらくジェフを眺めていた祖父だったが、やがて口を開いた。
 「この国の秘密をお前に話そう」
 その前に、と、ジェフは祖父の話を遮った。
 「ところでウェルバって何?」


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