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プロローグ 1

2013.02.27 (Wed)
 オプタリエの外の寂れた町、トリストティリス。
 かつて、数百年前にはラウレントゥマスと呼ばれていたが、今では廃れ果て、人気のなくなった、崩れたレンガばかりが並ぶ、願いの壁の外の小さな集落だ。
 何とか形を残したアーチ型の橋の下を流れる水も,薄茶色に濁っている。
 夕刻時、かつての大通りであったのだろう、広い小路で、小さな男の子が二人、棒切れをかざしてチャンバラ遊びに興じていた。
 「いくぞ!この悪党め!」
 悪党役の子に思い切り振りかぶって掛かっていったが、悪党役の子供は楽しそうに笑いながら彼の剣――、棒を、似たような棒切れで弾き飛ばした。
 「もう!ジェフ!!」
 「何だよ、ルドア」
 「たまには手加減しろよ!」
 「手加減なしだといったのはお前だろ!」
 「おれが手加減しねえぞって言ったんだ!お前は手加減しろよ、年上だろ?」
 いつもは子ども扱いするなと騒ぐくせに・・・。
 ジェフは笑いながらルドアの棒切れを拾ってやった。
 「もう一回だ!この悪党!」
 ルドアがもう一度棒切れを構えようとすると、頭の上から大人の男の声がした。
 「そこまでだ、ルドア、ジェフ」
 「父ちゃん」
 ルドアの顔が輝いた。
 「二人とも、騎士団には手加減なんてもん、ハナからねえからな。ジェフ、腕を上げたな」
 「ありがとうございます」
 ルドアの父親は、元は騎士団にいた人間だった。
 ジェフは嬉しそうに礼を述べた。
 「ジェフ、お前どこでそんな堅っ苦しい言葉覚えてくるんだ?もっとコイツみたいにガキのままでいいんだぞ」
 ルドアの父は息子をひょいと肩車しながら言った。
 「子ども扱いするなよ」
 「ほら出た」
 ルドアが不服そうな顔をすると、ジェフはニヤリと笑った。
 「そうそう、それでいいんだ」
 ルドアを肩車した父親の鎖骨辺りに、焼印の痕が見えた。
 罪人の焼印だ。
 民は罪を犯すと、鎖骨の辺りに『罪人の証』と呼ばれる烙印を押される。
 そして罪を償うと、再び『贖罪の証』と呼ばれる烙印を押され、『罪の証』は消え、釈放される。
 ベルスの王国の牢獄は非常に堅固で、これを破るのはほぼ不可能とされている。
 ルドアの父が何の罪で捕まったのかは、二人とも知らなかったし、聞こうともしなかった。
 子供好きの、優しく力強い父親であった。それだけで、子らは十分に安心できる。
 「ルドア、母さんが夕飯を作って待ってる。帰るぞ。ジェフも食べていくか?」
 「僕はじいさんがいるので」
 「そうか。それじゃあまたな・・・と、一人で帰れるか?」
 「子ども扱いしないでください!」
 ルドアの父はハハハと笑い、それでいいと言った。
 「それじゃあまたな」
 ジェフの頭をくしゃっと撫で、ルドア親子が肩車をして家路につくのを、ジェフは立ったまま、じっと見つめていた。
 それから思い出したようにジェフも家路に着いたが、その途中、急な雨に見舞われた。
 今は天気の変わりやすい気候だ。
 雨宿りをしようと手近な廃墟に忍び込んだが、入ってからギクッとした。
 立ち入り禁止の教会だった。
 この周辺が廃れてオプタリエの外に出されてしまった理由の一つには、この辺りが地震の多い地域であったことも含まれている。
 そしてこの教会は、度重なる地震で今にも崩れ落ちそうになっている。
 ――かのように見えた。
 ジェフは今、実際中に入って、外から見るほど崩れてはいないと思った。
 ふと、キラッと何か金色の光が目に飛び込んできて、彼は知らずと天井を見上げた。
 建物は残っていても、やはり天井に描かれた天井画はほとんどが崩れ落ち、神の擬人と思われる人物が、赤ん坊を抱いた女性に何かを手渡している様子だけが、はっきりと残っていた。
 その天井画の金色の絵の具が夕日に反射し、ジェフの目に入ったのだった。
 外を見ると、雨が降っているものの西日が輝き、それが反射したのだろう。
 その絵はなぜか深くジェフの心に入り込んだ。じっと天井を見つめていると、頭上でバサバサッと音がし、白い鳩が数羽、外へと飛び去って行った。
 早く帰れという印かと思い、東の空に虹が掛かる中を、無駄な抵抗と知りつつも、頭を雨からかばいながら、今度こそ家路へと着いたのだった。

 びしょ濡れになって勢いよく家の扉を開けると、安楽椅子に座った祖父と、腰から長い剣を下げた背の高い男が一人立っているのが目に飛び込んできた。
 祖父が何か言う前に、ジェフは咄嗟に手近にあった火掻き棒を引っ掴んだ。
 「誰だ!」
 ジェフは、誰だか知らない男に向かって叫んだ。
 この町は、無法者の町。
 寝所の奪い合いでの小競り合いなどしょっちゅうだ。
 何があっても、いつ誰が何をしにやってきてもまったくおかしくないのだ。
 ジェフは本能的に、祖父と自身の身を守る為、こんな大人に勝てるはずがないなどと考える間もなく武器を手にした。
 「ジェフ、それを置け。こいつは安全だ」
 祖父がようやく口を開いたが、ジェフは男を睨んだまま動こうとしなかった。
 すると、男の方からジェフに向き直り、胸に手を当てて礼をした。




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