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お団子をお供え

2015.09.27 (Sun)
 九月の満月の夜。
 エレナは神経をぴりぴりさせながら小屋に帰ってきた。
 街に降りて、薬を売ってきたのだ。
 その後からはジェフがやれやれと続いた。
 エレナは満月の夜の悪夢の恐怖から逃れようと、やけにバタバタと竈に火を起こしていた。
 そんなエレナを尻目に、ジェフは蝋燭を一つ一つ灯しながら声をかけた。
 「なあ、知ってるか」
 「何よ」
 「ある国には、中秋の名月といって、豊穣を感謝して月を愛でて、団子を供える風習があるそうだ」
 「月にお供え?ウケるわね」
 エレナは鼻で笑って一蹴した。
 彼女にとって、満月の夜とは本当に恐怖の対象でしかない。
 まざまざと眼の前に広がる血の海、人々の阿鼻叫喚。なぜそんな夢を毎月毎月見るのか、今の彼女にはわからないが、何か理由があるのだろうとは薄々気付いていた。
 「食うか?」
 「何を」
 「朝出かける前に芋で団子を作っておいた」
 「いつの間に・・・」
 目の前に差し出されたじゃがいもを丸めた団子を見て、エレナはうっかり吹き出した。
 「こんな日は料理したくないんじゃないか?」
 ジェフは先にひょいと団子を取ってかじりながら、エレナにも食べるように勧めた。
 「ただの灯りだと思えと言っても無理だろうが、とりあえず食え」
 「ご親切に」
 エレナはすっかり毒気を抜かれて、ジェフの向かいに腰をかけ、彼の作ったいびつな団子を口に運んだ。
 「しょっぱ!」
 「そうか?」
 ジェフはすでに二つ目の団子に取り掛かっていた。
 「塩、入れすぎ!」
 「気にするな」
 「人の料理に文句つけて悪いけど、あなた料理下手すぎ!塩だって貴重なんだからそんなに豪快に使わないでよ!」
 エレナが何とか咀嚼している団子からは、岩塩の砕けるシャリシャリとした音がしている。
 「じゃあ次の満月にはお前が作ってくれ」
 「何でよりによって満月に」
 「何か楽しみがあった方が、耐えやすいだろ」
 ああ、ジェフはジェフなりに本当に気を使ってくれているのだ。
 エレナは苦笑を浮かべて頷いた。
 「覚えていたらね」
 「俺が事前に言うから大丈夫だ。・・・だがしかし、本当にちょっとのどが渇くな」
 「だから、塩入れすぎなのよ」
 エレナが立ちあがって水差しを取りに行った間に、ジェフは曇りもなく輝いている満月を見上げた。
 ――たまには休ませてやれよ。これやるからよ。
 
 この塩団子で月が満足したのかどうかは定かではないが、その夜のエレナはいつもより酷い目ざめ方はしなかった。
 いつもは自分の絶叫で目を覚ますのだが、その晩はうなされているところをジェフに起こされただけだった。
 エレナは頬を伝う涙を拭いながら、ふふっと笑った。
 「何だ?」
 寝台の横に腰掛けたジェフが、不思議そうにエレナの涙を拭った。
 「お団子、効いたのかもね」
 「かもな」
 「これくらいなら、次の満月の晩、お団子作ってもいいわ」
 「そうしてくれ。俺ものどが乾かない団子がいい」
 エレナは震える手でもう一度涙を拭い、何とか笑顔を取り戻したのだった。





 何てことないお話になりましたが、中秋の名月に寄せて、お団子小噺。
 "if"にしようとは最初から思いませんでした。
 久しぶりにツンデレナに会いたくなって。
 ていうかお話書いたの何か月ぶりだよ!
 クオリティもだーいぶ下がっていますが、読んでくださった方、ありがとうございました。


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帰る場所

2015.07.20 (Mon)
 帰る場所


 秋の月夜、ガルシアはトリストティリスの家に帰ってきた。
 この地を踏むのも何年ぶりか。
 「クラウス!」
 ガルシアが粗末な家の扉を開けると、中から彼の妻が飛び出してきて、彼に抱きついた。
 「カレン・・・」
 ガルシアは安心したように妻の身体を抱きとめ、きつく抱きしめた。
 「クラウス・・・ああ、無事で・・・良かった・・・」
 カレンは涙を流しながら、夫の帰宅を喜んだ。
 二人とも王族で、齢はすでに百を超えている。
 それでも二人とも、三十代の頃の容姿を保ったまま、その恩寵を享受していた。
 「ここへはどうして?」
 カレンは扉を閉め、涙を拭いながら尋ねた。
 「カルロスの息子が七つになる。七つの儀の立会いに来た」
 それと、と、ガルシアはカレンの頬に手を添え、口付けた。
 「お前に会いたかった」
 額と額をこつんと合わせて、二人は互いの無事を確認するようにしばらくそうしていた。

 「私達を紋章官一族に仕える者として、受け入れていただきたい」
 約九十年年前――。
 カレンの父親は、幼い娘を連れてオプタリエを越えてやってきた。
 カレンの父親、リディウスは、都で同族である王族を殺した。
 他の王族に手引きされて屋敷へと入り込んだ夜盗に妻を殺され、娘を守る為、リディウスも剣を取った。
 夜盗を殺し、それでも怒りと悲しみが治まらなかったリディウスは、その王族の元へ行き、その惨劇の元凶となった同族をも斬り殺し、罪に問われることになった。
 自分が捕まってしまえば、カレンには寄る辺がない。
 罪人の娘として、王族といえど、ひどい仕打ちを受けることになるだろうことは容易に想像できた。
 リディウスは着の身着のまま、返り血を浴びたその身のままでカレンを連れ出し、オプタリエの外へと馬を駆けさせた。
 そして、かつてこの国を追われた紋章官一族に仕えることを決め、今、ウェルバの長、ステファノスの前に跪いた。
 事情を聞いたステファノスは、いたく同情し、一族に加わることを許した。
 「しかし、リディウス、ここでの暮らしは罪人として生きるも同然だ」
 「承知しております。しかし、カレンを、どうか守っていただきたい。身勝手な願いだということも承知の上です。ですが、この子には何の罪もないのです。私はこれから、紋章官一族の皆様を守る為、この身と剣を捧げます」
 ステファノスはしばしの間沈黙していたが、同席していたガルシア一族の当時の当主に命を下した。
 「リディウスとカレンに寝食を。ここでの暮らしを教えてやれ」

 リディウスとカレンがオプタリエの外へやってきてから十年が経った。
 その間に、ガルシアの当主は寿命が尽きてこの世を去り、その孫のクラウスがガルシアを襲名した。
 ガルシアは、リディウスと共にステファノスの元へ行こうとしていた。
 「行ってくる、カレン。絶対に家の鍵を開けてはいけない」
 「わかってるわ。気をつけて」
 カレンは十八歳の成人になろうとしていた。
 ガルシアが近づくと、二人がそんな会話をしているのが聞こえてきた。
 小路を曲がるまで、カレンは父を見送ろうとしていた。
 そのとき。
 「危ない!!」
 ガルシアが叫んだのと、リディウスが振り向きざまに剣を抜いたのはほぼ同時だった。
 しかし、リディウスを襲った男が彼を斬りつける方が速かった。
 カレンには何が起こったのかわからず、ただ呆然と立ち尽くした。
 そこへ、その何者かが返す剣でカレンに向けて剣を振り上げた。
 しかし、今度はガルシアの斬り込みの方が速かった。
 胸を突き刺された、恐らく賞金稼ぎと思われる男は、地面に膝をついた。
 「何者だ」
 ガルシアはまだ息のある何者かに詰問した。
 「知ってる・・・ぞ・・・。お前達が・・・紋章官一族・・・だと・・・」
 やはり賞金稼ぎだったようだ。
 男は、嫌な笑みを漏らした。
 「俺の・・・仲間が・・・お前達を・・・狙っている・・・どんなときも・・・だ・・・」
 ガルシアは、男の胸から剣を引き抜いた。
 瞬間、血が噴き出し、ガルシアの手を赤く染め、彼は剣を振って血を払った。
 「それくらい、知っている」
 息絶えた男に向けて、ガルシアは吐き捨てるように呟いた。
 それから、ガルシアは急いでリディウスのすぐそばに跪いた。
 「リディウス」
 賞金稼ぎの男から浴びせられた太刀は、王族といえど致命傷となっていた。
 「カレン・・・すま・・・な・・・」
 リディウスはただただ呆然と立ち尽くすカレンに目を向けていたが、やがてその目からも生気が失せた。
 「いや・・・」
 カレンはようやく我を取り戻したようにリディウスに駆け寄った。
 「いや・・・お父様・・・置いていかない・・・で・・・」
 カレンは涙を流して父の亡骸にすがりついた。
 しかし幾度その名を呼ぼうとも、リディウスは冷たくなっていった。
 「いやあああああっ!!!」
 狭い小路に、カレンの絶叫が響いた。

 それからカレンは、ガルシア一族に引き取られ、そこで紋章官一族の為に働いた。

 それから数年が経ち、ガルシアがウェルバの警護から戻ると、カレンが出迎えてくれた。
 「お帰りなさいませ」
 膝を折ってカレンが礼をすると、ガルシアは居心地悪そうに外套を脱いだ。
 「ああ」
 ガルシアもウェルバに仕える身であって、正直、人から仕えられるということに慣れていない。
 それでもカレンは言葉少なに、ガルシアの外套を受け取ろうとした。
 そのとき、二人の手が重なり合った。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 日陰に咲く花のように、カレンの美しさにはどこか陰りがあった。
 それでも、周囲の男達の目を惹き付けるだけの美しさは備えていた。
 手を重ね合わせたまま、カレンは思い切った行動に出た。
 「・・・ガルシア様」
 カレンはガルシアの手を取って、自分の頬にその手を添えた。
 まるで慈しむように。
 「・・・あなたを、お慕いしております」
 「・・・そんな穢れたもの、触らぬ方がいい。私の手は、あなたには想像もできないほど多くの人間の血を浴びてきた」
 カレンの言葉を無視して、ガルシアは手を下ろそうとした。
 しかし、彼女はぎゅっとガルシアの手を握ったまま、放そうとしなかった。
 「いいえ、私はあなたに命を助けていただきました。たとえ血に濡れた手であろうと、人を守ることもできる手だと、私は知っています」
 何ということを言うのだろう。
 今まで、自分は、紋章官一族に害なすものを殲滅させる為に人を斬る存在としか思っていなかったのに。
 「・・・カレン。あのときのことを言っているなら、それに対する謝意は必要ない。私はあなたの父上を守れなかった」
 「でも、ここまで私を守ってくださいました。・・・その手で」
 確かに、リディウスの死後、ガルシアはガルシア一族の当主として、カレンも皆も平等に守ってきた。
 正直、彼女が自分に想いを寄せていることにも気付いていたし、できることならその想いに応えたいと思っていた。
 しかし。
 「・・・私は、この紋章官一族は、絶対に生き延びるという約束ができない。しかしウェルバの一族の血は、絶対に絶やさせてはならない。彼らを守る為なら、私は命を懸けるし、己の平穏など望むこともしない」
 ガルシアはカレンの頬から手を下ろし、淡々と告げた。
 カレンはただじっと、彼の言葉に耳を傾けた。
 「あなたももう十分に苦しんだ。もうこれ以上、苦しまなくていい。・・・オプタリエの中に、私の伝がある。そこへ身を寄せた方がいい」
 「・・・いいえ」
 カレンは静かに口を開いた。
 「あなたとこの一族を置いて、自分だけ安穏とした生活を送ることこそ、私にとっては苦しみの道となるでしょう」
 「・・・カレン、あなたには何の咎もない。幸せになれ」
 「あなたのお傍に身を置くことが、私の幸せです」
 「・・・先ほどの言葉を聞いていなかったのか」
 ガルシアは苛立ちを隠せないように言った。
 「私はウェルバの一族の為に命を懸けると決めた身だ。あなたの傍にいるという約束は――」
 「していただかなくて結構です!」
 カレンは涙を流して大声を出した。
 その縋るような必死の姿に、ガルシアは呆気にとられた。
 「私は――、私は、あのときあなたに助けられていなかったら死んでいました。あなただけにその罪を背負わせることなどできません。私だって、あの男の命の上に立っているのですから」
 「一族を守るのが私の役目だ。あのとき私が剣を揮ったのを自分のせいだなどと思っているのなら、それは違う。謝辞など求めてはいない」
 「ならば私もあなたと共にこの一族をお守りします。たとえあなたがステファノス様と共にまた旅に出て、帰ってこないのだとしても、ずっとずっと、ここで一族をお守りします!いつまでもあなたを待っています!!」
 ばさりと、ガルシアの外套が地に落ち、カレンは彼に抱きすくめられた。
 「・・・カレン、気持ちは嬉しい。だが・・・、私は、あなたを苦しめたくない」
 「私は、欲深く、罪深い人間です。あなたに生きてほしいと願っています。あなたの背負うものが日に日に大きくなっても、いくつの命があなたの目の前で散ろうとも、それでもあなたに生きてほしいのです。でも約束なんていりません。私はあなたの手に守られたこの命で、あなたの帰る場所になりたい・・・そう、勝手に願っているのです」
 しばらくの沈黙の後、ガルシアが、ゆっくりと、かみ締めるように言葉をつむいだ。
 「・・・あなたの元に帰ってくる約束は、できない」
 「わかっています」
 「それでも、私と共に在りたいと・・・?」
 「はい」
 カレンは迷うことなく肯いた。
 ガルシアは彼女を抱きしめる腕にぎゅっと力をこめた。
 「ならば、この腕から逃れるな」
 普段も、先ほどまでも、非常に冷静で物静かな物言いの彼の口調が急に厳しいものに変わり、カレンはひどく驚き、目を見開いた。
 「決して放すな。この穢れた手を」
 「・・・はい」
 「もう、放さない。放してやらない。どこへ行こうと、どれほどお前と離れようと、私の心はお前のものだ」
 「ガルシア・・・様・・・」
 「クラウスだ」
 カレンの耳元でそっと囁き、腕の力を緩めた。
 「お前には、名で呼ばれたい」
 「クラウス・・・」
 泣き笑いのような表情で一瞬カレンを見つめたあと、ガルシアはゆっくりと彼女に口付けた。

 その後、ガルシアとカレンは、二人の娘に恵まれた。
 二人とも七つで紋章官一族に仕える選択をし、成人すると、同じ家門の家に嫁いでいった。
 それからも、カレンはガルシアの帰りを待ち続けた。
 このまま二人の寿命が尽きるまで、帰って来ないかもしれない。
 それでも良かった。
 神から授かった、この長寿の恩寵が尽きるまで、彼が無事に生き延びていてさえくれれば。

 ――私は、クラウスの帰る場所なんだから。

 そこへ、彼が帰ってきたのだ。
 カレンは、しばらくガルシアを抱きしめたまま動かなかった。
 ガルシアも、最後に触れてから十年は経つだろう妻の温もりに浸るように、彼女を放さなかった。
 「カルロス様は、なぜご子息の七つの儀に立ち会わないのです?」
 しばらくして二人が離れた後、カレンが尋ねた。
 「カルロスの妻のエリーナは、彼が出かけた隙に夜盗に襲われて命を落とした。・・・彼は、息子に会わせる顔がないと思っている」
 「そんな・・・」
 「私もしばらくはウェルバの家に留まることになるだろう。ここへも帰ってくる。・・・お前の元に」
 ガルシアは優しく微笑み、その黒髪をすっと梳いた。
 「・・・ありがとうございます!!」
 満面の笑みで礼を言った妻に、ガルシアは苦笑を漏らした。
 「お前が礼を言うようなことではないだろう。・・・礼を言うのは私のほうだ。待っていてくれて、感謝している」
 「私は、あなたの帰る場所ですから」
 これでまでも、この先も。
 だから、どうか、どうか生きて――。
 カレンはガルシアの手をぎゅっと握り、祈り続けた。
 この人に、どうか幸せな未来を――。





あとがき。
というわけでガルシア夫妻の馴れ初めのお話でした。
・・・なんか不完全燃焼。

「そんな穢れたモノ触るんじゃないよ。君になんか想像できないほどたくさんの命を奪った手なんだから」

っていう台詞を、某ゲームのキャラで二次創作して言わせたかったのですが、ガルシアに持ってきました。
てなわけで口調も変わる。
ガルシア夫妻は、ベルスの動乱を生き延びます。
ガルシアは暴動のあと、残された寿命を使って、うん、ネタバレになるからやめようかな。
もしかしたら、このお話書き直すかもしれません。
二話くらいに分けて。
そのときはまた読んでやってくだされ~。


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彼女の童話観

2015.02.04 (Wed)
 ジェフがエレナの家に居候になってから。
 満月の夜が近づき、エレナさんは神経を尖らせていました。
 エレナさんは毎月満月の夜になるとひどい悪夢を見て、自分の叫び声で目を覚ますのです。

 「・・・小さいとき、父さんや母さんが生きていた頃よ。満月の夜になると私が泣き叫んで目を覚ますのを知っていたのね。よく寝る前に昔話なんかをしてくれたわ」
 「ほう」
 ジェフさんはエレナさんがぴりぴりしているのを知りながら相槌を打ちました。
 「父さんや母さんはもう亡くなって、十歳くらいからずっと思ってたんだけど、」
 「何だ」
 エレナさんはどうしようもない恐怖心からか、いつになく早口でまくし立て始めました。
 「『シンデレラ』のガラスの靴ってどんな強化ガラスよ?」
 そこは突っ込んではならないところです、エレナさん。
 「『大きなかぶ』だってそんなに大きければそんなに大人数で引っ張らなくたって掘り返せばよかったんじゃないの?そんなに力いっぱい引っ張ったら普通葉っぱもげるわよ」
 それは一理あります。
 「『白雪姫』の毒りんごだって、のどにりんごを詰まらせただけであって、別にわざわざ毒りんご用意してやらなくも良かったんじゃないの?私の毒りんごなら口にした瞬間あの世行きよ」
 さりげなく怖いことを言っています。
 「それから、『眠れる森の美女』って百年眠るように魔法がかけられていただけで別に王子様のキス必要なかったんじゃない?っていうか世の中ではキスで目を覚ますのが世の中のお姫様の定めなの?私だったら知らない人にキスされて目を覚ますなんて絶対に嫌よ!」
 「・・・お前、満月の前で気が立ってるからって童話に当り散らすのはよせ。子供の夢をぶち壊すな」
 ジェフさんは真剣に童話を非難しているエレナさんを哀れんだような目で見つめてやっと口を挟みました。
 「ああ、もう早く朝になればいいのに!!」
 そう言ったきり、エレナさんはテーブルに突っ伏してしまいましたとさ。





満月に寄せて。
エレナやり場のない不安感にぶちギレ( ̄∀ ̄)
この間の『満月の晩に』はかなりほのぼのとしたお話になってたのに、
新澤の精神状態のせいで同じ満月話でもこんな毒々しい話に(笑)。
これらはもちろん新澤の中でずっと疑問に思っていたことで、
某様のサイトに別形態で献上したものを、
赤の紋章ワールドに置き換えて書き直しました。
どこかで似たような文章を見かけたと思ったら、それは私です。
当然ですが、この突っ込みの数々は私がずっと抱いていた疑問や突っ込みの数々です。
夢、持とうぜ、自分・・・。


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握り締めたその手の中に

2015.01.24 (Sat)
 決して自信の意欲からではない、自衛の為、民の為、多くの命をその手で奪ってきたジェフも、今まさにその罰を受けようとしていた。
 剣を持つ手が震えたのは初めてだった。
 自分の命を自ら絶つことへの恐怖ではない。
 初めて心から愛した女性をその手にかけることへの恐怖、己の非力さに対する口惜しさ、彼女をこれから襲うであろう苦しみを想像し、ジェフの手は震えが止まらなかった。
 しかし蛇毒に胸の内から犯されているエレナはもはや虫の息に近い。
 彼女の望み通り、エレナを彼の手で殺めなければ、何もかもが無に帰す。
 このままただエレナを看取れば、エレナを殺したのはクレストだということになる。
 その者を最も愛したる者の剣によってのみすべてが赦される――。
 エレナを殺し、この国の負の連鎖のすべてを食い止められるのは、自分しかいない。
 「こんなこと頼んで・・・本当に・・・ごめんなさい・・・」
 ジェフの震えを感じ取ったのか、エレナが彼の耳元で、ほとんど聞き取れないような声で囁いた。
 どうしてこんな残酷な罰を受けさせなければならないのか――。
 これから己の身に襲い来るであろう激痛に身構える様子もなく、ただジェフを愛おしそうに抱きしめているエレナの横顔を見て、彼は神々の残酷さを呪った。
 何より、彼女を自由にしてやれない己の非力さを――。
 もしも自分が、エレナに対して「自分を殺してくれ」と頼むことになったら、どれほどの葛藤を味わうだろうとジェフは思った。
 愛する者をその手にかける苦しみを、自分が愛した者に背負わせなければならない。
 それでもエレナは、この王女は、民を滅亡から救うため、ジェフに懇願した。
 「殺してくれ」
 と。
 どうして断れようか。
 自らの命も、心さえも犠牲にして、民の命を救おうとしている彼女の願いを。
 ジェフは震える手で、彼女の細い身体を抱きしめるように、もう一度剣を構え直した。
 剣の刃を直に掴んだ右手から血が滴る。
 「・・・エレナ、愛してる」
 それだけは、その一言だけは、もう一度彼女の心に伝えたくて、最期に囁いた。
 そして、一息にエレナの身体ごと、自分の心臓をも貫いた。
 
 不思議なことに、ジェフは一片の痛みも感じなかった。
 鉄の冷たささえ感じなかった。
 ただ、エレナへの愛だけを感じていた。
 二人の身体が地に崩折れ、血溜まりができ始めるのを目にした。
 ジェフは意識が遠のき、命が事切れるその刹那、エレナの手を強く握りしめた。
 この手だけは、絶対に放さない。
 そして、エレナの胸元で輝いていた紅玉の首飾りが、高い音を立てて粉々に砕け散るのを見届けた。
 その瞬間、細い細い糸で繋がっていたエレナの命は、とうとうその最期を遂げたのだと知った。
 深い眠りに引き込まれていくような感覚の中、ジェフは最期の力ですでに事切れたエレナの手を握り締めた。

 俺に愛を教えてくれて、ありがとう――。
 愛してくれて、ありがとう――。

 そしてジェフは、永遠の眠りについた。





ジェフとエレナの最期のシーン。
本編であんまりだらだらやると天井崩れるよってか殺し合いが止まらないYO!
ってなるので、こっちに持ってきました。
すごい時間が経っているようですが、ジェフが剣を構えてからの一瞬の想いです。

ついでにジェフもヤンデレではありません(^^;)
「二度とお前を見失わない」
と約束したので、その約束を守る為にエレナと最期を遂げる選択をしました。

なーんかこんなラストでよかったのかなーとホントにつくづく思います(-_-;)


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雪華の舞う日に

2014.12.05 (Fri)
 二千五百二年、冬、サルトゥス地方の農村部。

 ――寒いな~。
 ある早朝、チャドは寝床の中でごそごそと寝返りを打った。
 昨夜暖炉に細々と燃えていた火はすでに消えようとしていた。
 ――・・・寒い。
 寒すぎる。
 これじゃ凍えて死んでしまう。
 チャドは頭までかぶっていた毛布から思いきって半身を起こした。
 そしてやけに窓の外が明るいことに気付き――。
 「わぁっ、雪だ!」
 チャドは寒さも忘れ、寝台から飛び降りた。
 外はうっすらと雪が積もり、空は青く晴れ渡っていた。
 いそいそと冷たい服に着替えると、チャドは村の外れの施療院へと向かった。
 

 ――寒いな・・・。
 ルーカスはぼんやりと目を覚ました。
 外がやけに明るく静かだ。
 不思議に思って身を起こすと、白銀の世界に変わった景色が目に飛び込んできた。
 「雪か・・・」
 この様子なら午後には融けてしまうだろう。
 ルーカスはいつもよりも多めの服に身を包み、施療院へと向かった。

 ――冷えるな・・・。
 旅慣れたジェフでさえ、その日は寒さに目を覚ました。
 森の奥にある小屋の屋根裏。
 暖炉に火を入れて人気を残すわけにはいかないので、彼の小屋は極寒だ。
 屋根があるだけでもありがたいが、と、ジェフは屋根裏から一階の床に飛び降りた。
 そして、窓に目を向けると、森の木々が砂糖をかけたように白く染まっていた。
 冷えると思えば・・・。
 ジェフは埃の積もった床に足跡を残さぬよう気をつけながら、施療院へと向かった。

 「おかあさま!おかあさま!!」
 アリスは二歳になった娘の声に目を覚ました。
 隣で眠っていたアールもうっすらと目を開けた。
 「まだ夜が明けたばかりじゃない・・・もう少し眠っていなさい」
 眠そうな声でエレナの頭を撫でたが、エレナの声はますます大きくなるばかりだった。
 「おかあさま!おそとがしろいの!」
 そう言えば、今朝はなんだかよく冷える。
 アリスはそっと半身を起こし、外を見た。
 「まあ、雪だわ・・・」
 「ね!?まっしろでしょう?」
 「雪よ、エレナ」
 「ゆき?おいしい?」
 「食べちゃだめ。お腹をこわすから」
 くすくすと笑いながら、アリスは寝台から起き上がり、アールを揺り起こした。
 「アール、雪よ」
 「雪・・・?サルトゥスも雪が降るのか・・・?」
 アールも寝ぼけ眼で起き上がり、外を見た。
 「都で見て以来だな。冷えるな・・・」
 暖炉に薪をくべた三人の親子は、それぞれ服に着替え、外に出た。
 「あっ!いたいた!おはようみんな!」
 ちょうど、チャドとルーカスが商店街の方からやって来た。
 「チャド!」
 エレナが嬉しそうに、彼の膝の辺りに抱きついた。
 「ルーク、おはよう」
 エレナはルーカスにもにっこりと挨拶した。
 「おはよう、エレナ」
 「二人とも早いのね」
 「こう寒くっちゃ寝てられないよ」
 けらけらと笑うチャドの横で、エレナは新雪に足跡をつけて遊んでいた。
 「あしあと、たくさん!」
 「ほら、エレナ」
 手先の器用なルーカスが、雪を集めて小さな雪だるまを作り、エレナに渡した。
 「わあっ!かわいい!」
 両手で受け取ったエレナははしゃぎ声を上げた。
 「たいせつにするね、ルーク」
 「すぐ融けちまうぞ」
 「とける・・・?」
 「雪はね、エレナ」
 アリスがしゃがんでエレナと目線を合わせた。
 「お日様が昇って暖かくなるとすぐに融けて消えてしまうのよ」
 「しろいのなくなっちゃうの・・・?」
 「そうね、今日のお昼にはなくなってしまうわね」
 しょんぼりとしたエレナの手が、ぎゅっと雪だるまをつかみ、雪だるまの下半身が壊れてしまった。
 「あっ・・・」
 雪はこんなに脆く儚いものなのか。
 「手がかじかむぞ」
 しょんぼりとしたエレナの頭に、声が降ってきた。
 「あら、おはよう、ジェフ」
 母の声に、エレナはぱっと顔を上げて、さっとアリスのスカートの後ろに隠れた。
 ジェフはもう一つ小さな雪だるまを作り、エレナに渡してやった。
 「ルーカスの物より上手くはないだろうが」
 「・・・ありがとう」
 ぼそぼそと礼を言うと、エレナはそれっきり下を向いてしまった。
 「あんたも早いな、ジェフ」
 アールが言った。
 「荒野の旅人にもこたえる寒さか」
 ルーカスがそう言うと、ジェフは苦笑を浮かべた。
 するとそのとき、ふわっとジェフの目の前に雪華が舞った。
 降っているのではない。
 どこかから風に流されて飛んできただけ。
 「エレナ、ご覧なさい」
 アリスがエレナの頭を撫でると、エレナの顔に、冷たい雪の一片が舞い落ちた。
 「きゃぁっ、つめたい!」
 うち仰いだ空は青く澄み渡っているのに、不思議な光景だった。
 「どこかから舞ってきているのね。そろそろ暖炉の火が大きくなる頃だわ。みんな上がっていって?冷えてしまうわ」
 チャド、ルーカスがアリスの後に従い、施療院に入っていった。
 ジェフもそれに続こうとしたが、エレナが動かない。
 「エレナ?おいで」
 アールがエレナに声をかけると、エレナはじっと雪だるまを見つめていた。
 「おうちにはいったら、これ、なくなっちゃうの?」
 「そうだね」
 アールはしゃがんでエレナと目線を合わせた。
 「この辺りでは雪はめったに降らないから。でもルークとジェフにもらったそれはエレナの思い出の中にずっと残しておけばいい。そうすれば融けない」
 二歳の記憶がいつまで残るか不思議だが、王家の娘であるエレナのその頭脳に、アールは思いを託した。
 「ほんとう?」
 「目をつむって、雪だるまを思い出してごらん」
 エレナはぎゅっと目を閉じて、雪だるまを思い浮かべた。
 「ね?消えないだろう?」
 「うん!」
 「さあ、おいで。体が冷たくなってしまうよ」
 アールはエレナを抱き上げ、施療院の中に入っていった。
 その手にはしっかりと雪だるまが握られていた。
 ジェフはその後について施療院に入ろうとしたが、一瞬だけ、エレナが自分を見て微笑んだように思えた。
 が、エレナはすぐにふいっとまたそっぽをむいてしまった。
 この村に帰ってきた初日、思いもかけず彼女を外套から振り落としてしまったのが相当痛かったんだろうな。
 ジェフは苦笑して、今度こそ友人たちの後に続いた。
 
 今はまだ、平和――。




 雪国生まれ雪国在住の新澤。憧れの台詞があります。
 それは、
 
 「わぁっ、雪だ!」

 っていうアレ。
 毎年3メートルも積もるので、雪にはほとほと嫌気がさしているんですが、こういう台詞が言えるくらい、心の余裕を持ちたいものです。
 今回はチャドに言ってもらいました。
 子どもエレナにしようかと思ったんですが、そうそう雪の降る場所ではないので、エレナは雪を知らないだろうと。
 となるともうチャドしかいませんでした(笑)。
 2014年、新澤生息地の初雪の日に寄せてお送りいたしました。


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